2018年8月にニコンが満を持して発売した新世代ミラーレス一眼カメラ「Zシリーズ」。同社としては初めてフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラで、口径55ミリの新マウント「Zマウント」を採用するなどした野心作だ。同シリーズに込めた作り手の思いを4回にわたってお届けする。

 第2回は、ボディーの設計を担当した村上直之氏(同社 映像事業部 開発統括部 第一設計部長)と外観やユーザーインターフェース(UI)などのデザイン全般を担当した橋本信雄氏(同社 映像事業部 デザイン部長)の2人に、ボディーの形状やボタン配置の設計を、デザインや機能、UIや操作性と絡めてどういう考え方で設計していったかを聞いた。

55mmという大口径のマウント開口部が迫力を醸し出すZ 7のボディー正面
EVFが配置された上部へとマウントのサークル形状が食い込み、その口径の大きさを強調したデザインとなっている。(出所:ニコン)
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ファインダーを覗(のぞ)いたまま操作するのがミラーレスの操作フロー

「ボディーの大きさ」というと、どうしても前から見た大きさ(投影面積)で考えてしまいがちです。実際は前後、つまりボディーの厚み、奥行きの方向でも「小型化」と「操作性」のせめぎ合いがあったのですか。

村上 直之氏(ボディー設計担当、以下村上氏):我々はカメラをあくまで「道具」と考えています。それ故に使い勝手を犠牲にしてまでの小型化やデザインは本意ではありません。

 使い勝手でこだわったポイントは「ファインダーを覗きながらの操作」です。ミラーレスカメラ最大の長所は、EVF(電子ビューファインダー)に、さまざまなカメラの設定情報をリアルタイム表示できるところ。映像品質も光学ファインダーに近くなり、ユーザーはファインダーを覗き続けたまま、シャッター速度やISO感度、露出補正の設定などを変更するようになりました。

 つまり、ミラーレスでは撮影フロー(手順)がこれまでとデジタル一眼レフと大きく変わる。その変化に耐え得る製品を我々は造りたかった。そのためには、ファインダーを覗きながらの操作で使いやすいように、操作部材、つまり設定ボタンなどを配置する必要があります。

 今日は開発途中のモックアップを幾つか持ってきました。「ファインダーを覗きながらの操作」に主軸を置いてブラッシュアップした変遷がモックアップのボタン類に表れています。

ニコン 映像事業部 開発統括部 第一設計部長 村上 直之氏
D850やD5をはじめとするデジタル一眼シリーズをはじめ、今回のニコンZシリーズでもボディーの設計を手がける。(写真:栗原 克己)
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ミラーレスで大きく変わる撮影フロー

橋本 信雄氏(デザイン担当、以下橋本氏):従来のDシリーズでは、シャッター速度や露出補正、オートフォーカスやストロボ動作設定など、さまざまなセッティングの変更時には背面の液晶ディスプレーを使う前提でした。カメラを両手で持ち、ディスプレーにメニューを表示する。ボタン操作で変更する項目を選んで値を設定し、カメラを構えてファインダーを覗いて試し撮り。カメラを目から離してディスプレーで試し撮り結果を確認、必要なら別のセッティングに変えるという動作の繰り返しになります。

 ミラーレス一眼のZシリーズならファインダー(EVF)に背面ディスプレーと同じ映像や情報を出力できます。つまり一連の撮影フローをカメラから目を離すことなく「ファインダーを覗いたまま」実施できるわけです。Zシリーズではこのメリットを生かすために、右手だけでほとんどのセッティング変更をできるような使い勝手にこだわりました。

 暗所での撮影でもEVFは光学ファインダーより有利です。肉眼で見るより全体的に明るい状態で被写体を見られるからです。一眼レフとミラーレス一眼では撮影フローがこれだけ変わります。

ニコン 映像事業部 デザイン部長 橋本信雄氏
ニコン製品全般のボディー外観やUI、外箱などのデザイン全般を手がける部署を統括。ニコンZシリーズでもその取りまとめを行った。(写真:栗原 克己)
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ボタン類を右手側に集中して片手で操作可能に

橋本氏:ファインダーを覗いたまま操作を行うZシリーズでは、本体側は右手だけで少しでも多くの操作ができるような工夫を施しています。左手はレンズに添えていますからね。具体的にはボディー背面の左右に散っていたボタンなどの機能を集約して点数を絞り、右側へ集中させたわけです。この「機能を集約させていく作業」がけっこう大変でしたね。

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