ニコンが満を持して世に問うた新世代ミラーレス一眼カメラ「Zシリーズ」。2018年8月に発表会を行った後、9月に「Z 7」が、そして11月には「Z 6」が発売され、ニコンもフルサイズミラーレス一眼へと本格参入を果たした。かつて展開していたミラーレス一眼カメラ「Nikon 1」とはまったく違う設計思想を持ったZシリーズは、プロ、そしてハイアマチュアをユーザーに想定したハイスペックなカメラとして世に放たれた。

ニコンの新世代ミラーレス「Zシリーズ」の開発をリードした3人の開発者 左から光学本部 第三設計部長 鈴木剛司氏、映像事業部 開発統括部 第一設計部長 村上直之氏、同事業部デザイン部長 橋本信雄氏
(写真:栗原克己)
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 Zシリーズは、ニコン初の35ミリサイズ(フルサイズ)画像センサー採用のレンズ交換式ミラーレス一眼カメラの新シリーズである。2018年7月に開発が発表され、有効画素数4575万画素のZ 7(写真)が9月28日に、有効画素数2450万画素のZ 6が11月23日にそれぞれ発売された。レンズマウントには口径55mm、フランジバック16mmという新規格の「Zマウント」が採用されている。

ニコンの新世代ミラーレス1眼「Z 7」
NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sを装着した(出所:ニコン)
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 ニコンがこれまで使い続けてきた「Fマウント」(口径44mm、フランジバック46.5mm)から大きく仕様を変えたのは「フルサイズミラーレス」に最適化するため。Fマウントはフィルムカメラ時代の規格であり、画像センサーの有効活用やボディーの小型化に難がある。もう一方の雄であるキヤノンも2018年9月5日に従来の「EFマウント」(口径54mm、フランジバック44mm)と異なるフルサイズミラーレス専用の「RFマウント」(口径54mm、フランジバック20mm)を発表、10月下旬に対応カメラを発売している。

 フィルムカメラ時代、1959年のニコンFから一眼レフを作り続けて約60年の歴史を持つ同社が満を持して発売したZシリーズに込めた作り手の思いを、4回にわけてお届けする。

一眼レフと並ぶ新たな軸としてのミラーレス一眼

Zシリーズの具体的なお話をうかがう前に、ニコンとしては従来の一眼レフに対して「ミラーレス一眼」をどう位置付けているかをお聞かせください。ミラーレス一眼は一眼レフに取って代わられていくものなのでしょうか?

村上直之氏(以下、村上氏):我々はフィルムカメラからデジタル一眼レフと製品を作り続けてきました。その結果、多くのユーザーに支持して頂いています。これは我々にとって大事な資産であり、一眼レフは今後も変わらず継続して製品開発を続けていきます。一方、今回のZシリーズは市場のニーズに応え、従来のデジタル一眼レフに新たな1つの軸を加えるという意図で開発しました。

 フィルムからはじまってデジタルになり、フィルムの給送系がなくなるなど中身の進化はありました。しかし、使う道具として考えた場合、目指すところは同じ。ニコンが長年培ってきた製品作りのDNAを注ぎ込んで、ユーザーに満足していただける道具を目指してZシリーズは開発しています。

ニコン 映像事業部 開発統括部 第一設計部長 村上直之氏
D850やD5をはじめとするデジタル一眼シリーズをはじめ、今回のニコンZシリーズでもボディの設計を手がける。(撮影:栗原克己)
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Nikon 1とはターゲットが全く違う

ニコンとしてはZシリーズ以前に「Nikon 1」というミラーレスを展開していました。

橋本信雄氏(以下、橋本氏):我々にとってNikon 1も大事な製品群ではあるのですが、今回のZシリーズとは「ターゲットユーザーが全く違う」という認識でいます。今回のZシリーズはフィルムのニコンFからはじまり、Dシリーズへと続いてきた一眼レフ進化の筋道にあるシリーズです。

村上氏:Nikon 1で得た資産をまるっきり活用していないかというとそんなことはありません。オートフォーカスの技術など要素となる部分で経験が生きています。

橋本氏:今後、ということであれば、ミラーレスと一眼の比率は変わっていく可能性は当然あります。しかし、動体の撮影とか、まだミラーレスが追いついていない、撮りにくい被写体やシチュエーションがあり、そういう意味ではまだまだ一眼レフの必要性は高いと言えます。

村上氏:改善は進んでいますが、現状ではEVF(電子ビューファインダー)注1)はタイムラグがあります。そのため、光学ファインダーの感覚に慣れていると、例えばモータースポーツや球技の写真など、「現状のミラーレスでは仕事の道具として使えない」という利用者がいます。その差をどれだけ埋められるかは我々の今後の挑戦になりますが、少なくとも現状は一眼レフの持つ利点はあると考えています。

注1)従来の一眼レフカメラの光学ファインダーの機能を電子式で再現し、今、写そうとしてる画像を確認できるようにしたもの。
ニコン 映像事業部 デザイン部長 橋本信雄氏
ニコン製品全般のボディ外観やUI、外箱などのデザイン全般を手がける部署を統括。ニコンZシリーズでもそのとりまとめを行った。(撮影:栗原克己)
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バッテリーの消費もまだ一眼レフのほうが有利ですよね?

村上氏:1枚の画像を撮影することにかかる消費電力は一眼レフもミラーレスも変わりません。しかし、撮った後にEVFや背面モニターに画像を表示する時間を30秒に設定して撮影可能枚数を算出しています。ですから、実際には30秒を5秒で止めてしまえば当然、撮影可能枚数はもっと増えますね。

しかし、その表示時間を短くすると、撮影時にファインダーか背面に電力を使って画像を表示しなければならないミラーレスの使い勝手としての欠点も目立つようになりますね。

村上氏:ただ、この撮影可能枚数の算出は1枚撮って30秒、1枚撮って30秒という想定なので、数枚まとめて撮影してから確認、といった現実の撮影ではカタログ値よりも多くの枚数が撮影できるはずです。

2018年8月に都内で開催された「Z New Products Global Launch Event」での1コマ
ニコン代表取締役兼社長執行役員の牛田一雄氏は、このステージで「Z」の名に「究極・最高」の意味を込めたと語った。
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