旭化成メディカルMT(本社大分市)のプラノバ工場(宮崎県延岡市)は、ウイルス除去フィルター「プラノバ」の品質向上を目的に、人工知能(AI)によるデータ分析に取り組んでいると明らかにした(図1)。プラノバは、例えば20nm程度の大きさのウイルスを透過させず、15nm程度のたんぱく質を透過させる繊維(中空糸膜)を利用したフィルター装置。生体由来のたんぱく質製剤や、生物の細胞を利用して製造するバイオ医薬品において、ウイルスによる汚染を除去する目的で利用する。このフィルターにおける“穴”の大きさのバラつきを低減するのに、AI技術開発のスカイディスク(本社福岡市)による技術を取り入れている。

図1 旭化成メディカルMTプラノバ工場
セルロース製のウイルス除去フィルター「プラノバ」を生産する。(日経 xTECHが撮影)
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中空糸の微細構造を化学的プロセスで制御

 プラノバ繊維は、コットンリンター(綿花の種の周囲にある短い繊維)を銅アンモニア溶液に溶かし、これを2重紡口と呼ばれるノズルから凝固液中に押し出して得られる、微細なストロー状の膜。ストローの直径は約300μmで、ストローの壁の厚さは約30μm。この壁に数十nmの微細な穴が開いており、この穴よりも大きなものの透過を阻止する(図2)。このストロー状の膜を何本も束ねてフィルター装置にする(図3)。

図2 ウイルス除去フィルター「プラノバ」
(出所:旭化成メディカル)
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図3 プラノバに使う中空糸の構造
ストロー状になった繊維の壁にある微細な穴がウイルスを阻止し、ウイルスより小さなたんぱく質を透過させる。(日経 xTECHが作成)
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 中空糸は化学的プロセスで造るため、ストローの壁に開いた穴の大きさはある程度のバラつきを持つが、バラつきの範囲は一定以内でないと製品として成り立たない。大きすぎる穴があるとウイルスの透過を許す確率が高まるし、逆に小さすぎる穴が多いと製剤として必要なたんぱく質を阻止してしまったり、ろ過に時間がかかって顧客である製薬会社の要求条件を満たせなくなってしまったりする。糸の構造に影響するのは「化学反応における物質の移動速度」(旭化成メディカルMTプラノバ生産本部本部長兼プラノバ工場工場長の大野勝則氏)だが、工場で制御可能なパラメーターは、原材料や中間生成物の温度、濃度、流量など。これらをどうコントロールすれば物質の移動速度を変えられ、穴の大きさとバラつきをコントロールできるかのメカニズムが明らかになっているわけではない。

* 顧客先である製薬会社は、法律に基づいて当局に届け出た工程の内容や製造条件を簡単には変えられない。

 これまでは実地で得た条件を設定しており「開発段階から見ればかなりばらつきを抑えており、競合製品と比べてもばらつきが少なく、世界的にトップのシェアを得ている。しかし、さらにばらつきを抑えるにはどう条件を変えればよいかを知るのになかなかよい方法がなく、従来と同じ条件を守り続けるしかなかった」(大野氏)。改善のため製造データを取得し、条件設定と製造結果の間の因果関係を洗い出すため多変量解析による分析を試みたが、思うように結果を得られていなかった。そこでAIによる分析を取り入れることにした。

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