昨今、多くの大作ゲームの制作者は、大人のプレーヤーを夢中にさせるために全力を尽くしています。何百時間を費やしてもさらなる奥深さが味わえるボリューム! 多くのプレーヤーが同時参加することによって生まれる競技性! あるいはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの最新テクノロジーを取り入れた革新性! などなどを磨きながら、猛烈な開発競争を行っています。

大人も子供も、コントローラー持てない未就学児すらを夢中にさせるデザインが隠されています
(イラスト:闇雲)
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 そんな時代だから、およそ10年前から任天堂が独自路線を着々と歩み始めたことに、多くの人が気づいていないのかもしれません。

大人のゲームファンや開発者が気づかない任天堂の戦略

 たとえば、2019年1月に発売されたNintendo Switch(以下、Switch)向けのソフト「New スーパーマリオブラザーズU デラックス」(以下、マリオUデラックス)です。任天堂の看板ソフトの最新作であるにも関わらず、世間で大きな話題にはなっていません。ネットを巡ってみても、このゲームについてアツく語っている文章を、ほとんど見かけません。

Nintendo Switch用ゲーム「スーパーマリオブラザーズU デラックス」
昔ながらのアクションゲームだが、子供や大人はもちろん、コントローラーを満足に操作できない未就学児でも楽しめる仕掛けが施されている(出所:任天堂 (c)2012-2018 Nintendo)
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 確かにこのゲーム、1985年にシリーズ1作目を発売して以降、基本システムを変えていないゲームの続編に過ぎません。2012年にWii U向けに発売された「New スーパーマリオブラザーズ U」、2013年に発売された「New スーパールイージU」の全ステージを収録したリメイク版でもあります。わざわざ注目する必要なんかないよ! と多くのゲームファンは思ったのでしょう。

 でもわたしは、そんな風潮に大声で異論を唱えたいと思うのです。いざプレーしてみると、これは昨今の任天堂路線の集大成のようなソフトであると気づくからです。とりわけ小さなお子様がいる家庭ならこのゲームのすごさを思い知らされるはずです。

 論より証拠。ためしに小さな子どもたちに一緒にプレーしてみてください。まだコントローラーの操作がおぼつかない年齢の、学校に通っていない年齢の未就学児でもだいじょうぶ。おそらく、ちゃんと楽しく遊んでしまうはずです。

 これ実は画期的なことなのです。世の中の99%のゲームが「ちゃんとコントローラーが操作できる」人のみを対象に作っている(当たり前のことですね)のに対し、マリオUデラックスは、あらゆる年齢の子どもたちを夢中にさせるという前代未聞のチャレンジに挑戦し、成功しているのですね。よくよく考えと、とんでもないことを実現してしまっているんですよ、このソフト。

2009年から採用された画期的アイデア「シャボン玉」

 昔ながらのアクションゲームなのに、どうしてコントローラー操作がおぼつかない未就学児でも楽しめてしまうのか?

 これを理解するには「スーパーマリオブラザーズ」シリーズ(以下、マリオシリーズ)の歴史を知っておく必要があります。これ、もともとはゲームの原点ともいえる横スクロールアクションゲームです。何度も失敗を経験しながらコントローラー操作を上達させ、ゲームに夢中になっていくというゲームです。つまり、世間一般のゲームとまったく同じです。

 しかし、2009年に「New スーパーマリオブラザーズ Wii」(以下、マリオWii)が登場したとき、大きな変革がありました。シリーズ初となる4人同時プレーが可能になり、新システム「シャボン玉」が採用されたのです。マリオが敵に触れたり、あるいは穴に落ちたりすると、そのプレーヤーが操作していたマリオがシャボン玉に入った状態で画面に出現。シャボン玉を割れば、そこからゲームに復帰できるようになったのです。

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