CASE時代に向けて、材料メーカーも抜本的な変革が求められるのだろうか。材料、特に機能材料は、製品機能や生産プロセスで差別化できることが多く、ビジネスモデルで大きく差が付くケースは少ない。技術の研さんによって変化するユーザーの要求機能に対応する、すなわちスペックインを成り立たせることが、材料メーカーにとっての定石的な勝ちパターンである。

 特に自動車業界は、エレクトロニクス業界と並んでスペックインの重要性が高く、これらの業界のリードユーザーによって日本の材料メーカーは鍛えられてきた。ただし、そのような勝ちパターンはここ数年で急速に変化しつつある。

 本稿ではまず、近年の自動車業界のトレンドがもたらす材料メーカーにとっての具体的な機会を整理する。後半では、先進プレーヤーの動きを踏まえ、材料メーカーの戦い方に今後どのような変化が生じ得るかを考察する。

最も影響が大きいのは「電動化」

 CASEというトレンドの中で、材料メーカーにとって最も直接的に影響があり、要求が顕在化しているのは「Electric(電動化)」であろう。電動化は、「電池」「車体」「社会」の大きく分けて3つのレイヤーで影響を及ぼす。それにより新たに期待される代表的な材料の機会は多岐にわたる(図1)。

図1 電動化がもたらす代表的な機会
(出所:ADLジャパン)
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 まず「電池」については、電極や電解質などの電池材料そのものの進化は必須であり、既に多くの材料メーカーがしのぎを削る本丸領域である。電池材料の開発はそれだけでビッグトピックであるため今回は詳細を割愛するが、電池材料以外でも材料の機会は存在する。

 例えば、急速充電・全固体電池などの実現に向けて、高度な熱マネジメント技術や、爆発やガス漏れなどに対する安全性の担保技術が必要とされている。これらは、システムとして解決する方向と、革新的な材料を活用する方向で検討が進められており、材料メーカーにとっての貢献機会が存在する。

 さらに、パワートレーンが変化することで「車体」や「社会」にも抜本的な変革が求められつつある。熱制御はもちろんのこと、エンジンがなくなることによるNVH(Noise、Vibration、Harshness)制御の変化や、電気自動車(EV)専用プラットフォーム(PF)のように車体構造そのものを電池に適した形にする動きもある。

 熱制御の観点では、熱交換器や配管などの性能向上だけでなく、HVAC(Heating、Ventilation、Air Conditioning)システムそのものを、従来の蒸気圧縮型ではないシステムへと刷新する方向性も検討されており、熱創出を実現する新たな材料の機会が生じる可能性がある。

 また、車室内の熱利用効率を向上する、もしくは何らかの発電技術を組み合わせる方向性も検討されており、断熱・遮熱・放熱材料やエネルギー変換を実現する材料の需要の高まりが期待される。

 NVH制御においては、モーターや風切り音への対応として高周波の吸音材料の需要が高まっている。振動制御についても、抜本的に見直しが進められる可能性がある。

 「社会」の変化としては、充電インフラ整備というハードウエアの側面だけでなく、車両間連携や都市との連携といったソフトウエアの側面でも革新が必要となっている。材料に関わる機会としては、電池の再利用が現実的になってくれば、電池の評価や品質保証サービスなどで、材料メーカーが付加価値を獲得できる可能性がある。

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