本連載の第5回で紹介したように、自動車市場におけるソフトウエアの開発量は、従来の100倍以上の規模で爆発的に増えている。こうした状況の中で完成車メーカー(OEM)は、ソフトウエア開発の生産性を抜本的に改善するための新たな開発スキームを見いだす必要に迫られている。実際に、OEMやティア1サプライヤーはこれまでの常識を捨て、ソフトウエア開発を抜本的に革新するための打ち手を探索し始めている。

 例えば、欧州のOEMは「自動車だから」という前提を見直し、ハードウエアをモデルベース開発(MBD)などの技術でモデル化しながら、ソフトウエア領域にアジャイル開発・マイクロサービス型組織といったICTベンダーの得意技を持ち込み、ハードウエアの品質保証を担保した上で高速な仮説検証ができる体制を構築し始めている。第10回となる今回は、CASE時代に求められるICTベンダーの役割について考察する。

CASE時代のICTベンダーに求められるもの

 CASE時代において、ICTベンダーは自らの役割を主体的に大きく変えることを求められている。OEMやティア1サプライヤーは、安全性重視の姿勢から保守的な組織と見られがちだが、経営レベルにおけるCASE時代の生き残りに向けた危機感は相当なものがある。新たな世界を生き抜くためのアイデア・打ち手を、自動車業界の序列にとらわれず広く外の世界に求めるようになってきている。

 こうした状況の下でICTベンダーに求められるのは、時代遅れになりつつある既存のOEMの開発体制を前提とした“御用聞き”業務から脱却することである。具体的には、先端的ICTプレーヤーの開発手法や組織マネジメントを、自動車市場が抱える本質的な制約(従属的な慣習ではない)に合わせた形で導入し、OEMの組織・プロセス、ひいてはソフトウエア開発を捉える戦略そのものに影響を与えていくことにある。

 こうした動き方ができないICTベンダーは、必然的に自社の役割がレガシーシステム周辺に制限され、その影響範囲を縮小させていくことになる。そこで本稿では、ICTベンダーが、先進的な考え方を持つOEMやティア1サプライヤーに対して、具体的にどのような価値を提供していくべきかについて論じていく。

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