今、イノベーションという文脈で何が起こっているか。過去、数百年の工業化時代を経て、「利便性の追求」という観点での基本的なニーズが満たされ、多くの製品がコモディティー化しつつある。こうした状況の中、多くの企業がイノベーション創出の重要性を認識するところとなっている。一方、そのイノベーションの意味合いや「起こし方」、すなわちイノベーションマネージメントの手法が時代とともに変化していきているという事実は、あまり認識されていないように思われる。

 CASE時代において、これまでと異なる価値創出を求められているモビリティーサプライヤーの事業展開を考える上では、「どのような世界観を実現するか」という第8回の視点に加え、「どのように実現するか」というイノベーションマネージメントの視点も重要である。第9回では、今の時代に求められるイノベーションマネージメントの手法と、その具体的な施策例としてのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)やアクセラレータープログラム活用の要諦について論じる。

 イノベーションの重要性の認識が浸透したこの30年間で、イノベーションのモデルは大きく分けて「性能進化モデル」「顧客協創モデル」「エコシステムモデル」という3つのステージで進化してきた。

イノベーションモデルの変遷

 かつて、顧客のニーズが明確かつ共通的であった時代には、イノベーションとは「ある決まった性能軸での飛躍」=「性能進化モデル」であり、その実現においては社内技術開発のマネージメントが重要であった。すなわち、目標性能に対して「いかに効率的に革新的なアプローチを探し出し、量産にこぎつけるか」がマネージメントの主眼であった。多くの日系企業のイノベーションマネージメントはこのときの成功体験をベースとしており、必要性能が定義されれば非常に強い力を発揮することが特徴である。現在でも、性能軸での飛躍がKSF(Key Success Factor)となっている電子部品や一部の機能材料においては、日系企業は高い競争力を維持し続けている。

 これに対して2000年以降になると、価値観の多様化に伴い、顧客自身も何が必要かを明確に定義することが難しくなり、顧客の潜在的な悩みを捉え、それに対してソリューションを提供する「顧客協創」が新たなイノベーションモデルとして加わった。このモデルにおいては、要素技術の革新性やその実現の速さというよりは、顧客との関係性や顧客情報のマネージメントが重要である。ソリューション提供を実現するためのプロダクト連携やシステム連携はもちろんのこと、企画提案力や機動力をどう実現するかまで含めて自社の勝ち方を描くことが必要になる。

 マーケットイン型でソリューション提供を志向する日系企業もこれに該当すると捉えることもできるが、このモデルが別次元のインパクトをもたらすのは「データ」と掛け合わされた場合である。米ゼネラル・エレクトリック(GE)やドイツ・シーメンス(Siemens)、オランダ・フィリップス(Philips)などの企業は、その意味において先進的な取り組みを継続している。BtoBの中でも特にデータ活用の重要性の高い産業機械や医療などの領域において、プレゼンスを高めることに成功している。コマツも、「KOMTRAX」を通じて建設機械の領域での自社の影響力拡大を実現している。

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