これからのスマートホーム(IoT住宅)に欠かせない建材・設備のIoT化は、どのようなきっかけで始まったのか。そして、今後どの方向に進んでいくのか。IoT製品の開発に挑む建材・設備メーカーの取り組みを追った。今回は、YKK APの開発本部住宅商品企画部長の中谷卓也氏に話を聞いた。2回にわたって紹介する。

居住者依存の戸締まりがきっかけ

 YKK APは、IoT機能を窓に組み込んだ製品「ミモット」の販売を2019年3月に開始した。窓の鍵(クレセント)が開いているか否かがリアルタイムで分かるだけでなく、出かけようと玄関から離れたタイミングで玄関ドアと連携して、施錠忘れをスマホに伝える機能を提供する。

窓の鍵(クレセント)にIoT機能を搭載。電池を必要としないセンサーを組み込み、施錠状態を確認できるようにした。玄関ドアの電気錠などとも連携可能だ(写真:日経 xTECH)
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 ミモットの開発を始めるきっかけは、2016年春に訪れた。日本の大手デバイスメーカーがYKK APに環境発電デバイスの試作品を持ち込み、「これを何かに使えないか」と相談を持ちかけた。環境発電とは、外部電源を必要とせず、僅かな光や振動、熱などから発電する技術だ。

 その技術を見ながら検討を重ねたYKK APには、1つのアイデアが思い浮かんだという。「この技術を使えば、これまで実現できなかった開口部の戸締まりの機能向上を図れる可能性がある」

 戸建て住宅の開口部である窓(サッシ)の場合、製品開発においてある悩みがあった。「戸締まり」という性能は、居住者に依存せざるを得ないという点だ。

 窓の場合、框(かまち)の断熱性能を高めたり、複層ガラスや3層ガラス、真空ガラスを採用したりすれば、断熱性能は高まる。この場合、断熱性能を高めた窓製品を設置するだけで、居住者が意識することなく、住宅の断熱性能を向上できる。

 防犯性能を高めた窓を設置する場合も同様だ。ガラスを外部から割られないように考慮した合わせガラスを採用した窓製品を設置するだけで、居住者が意識することなく、外部からの侵入が困難になり、住宅の防犯性能は高まる。

 だが、戸締まりは違う。窓に補助錠を追加するなどして戸締まりの性能を高めても、居住者が施錠しなければ意味がない。効果を発揮できるか否かは、居住者の行動に依存せざるを得ないのだ。いわゆる「無締まり」は防ぎようがなく、そのために起こる侵入犯罪が後を絶たない。

 YKK APはここに目を付けた。環境発電デバイスを窓の鍵(クレセント)部分に組み込めば、施錠、解錠を把握できる。施錠していないことを居住者に伝えて施錠を促せば、無締まりを減らせる。

クレセント部分に環境発電デバイスを組み込んだ。電池の交換などは必要ない(写真:YKK AP)
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