「デジタル思考によって生まれた提案を実現した、極めて先駆的な作品だろう。床と壁、天井の境界の概念を軽やかに飛び越えた刺激的で挑戦的な建築」(佐藤総合計画の細田雅春代表取締役社長)

建設中の航空写真。何の建物か分かりますか?(写真:三島 叡)

 今回は建設中の写真から始めてみた。もうお分かりだろうか。

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 新元号が「令和」に決まった2019年4月1日、書籍「検証 平成建築史」(内藤廣+日経アーキテクチュア著)が発行となった。同書の企画として、「平成の10大建築」を選定した。建築分野のキーパーソン20人に「私の平成建築10選」を挙げてもらい、その得票数で「平成の10大建築」を選定した(20人の顔ぶれはこちらを参照)。その結果をひと足先に、カウントダウン形式でお伝えしている。今回は7票を獲得して3位となった「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」である。

平成の10大建築─3位
(7票獲得)
横浜港大さん橋国際客船ターミナル
所在地:横浜市中区海岸通1-1-4
設計者:foa
建築設計協力:オーヴ・アラップ&パートナーズ (コンペ)、現代建築研究所(設計) 、構造設計集団SDG(構造)、森村設計(設備)
竣工:2002年11月(同年6月一部供用)

2002年6月1日にオープンした翌日の横浜港大さん橋国際客船ターミナル。以下の写真も、特記以外は同じ日に撮影(写真:寺尾 豊)
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 横浜市中区の大さん橋ふ頭に、2002年に完成した。設計者は分かるだろうか。ザハ・ハディド氏ではない。 アレハンドロ・ザエラ・ポロ、ファーシッド・ムサビ両氏によるfoa(フォーリン・オフィス・アーキテクツ)という設計事務所だ。

 実は筆者(日経アーキテクチュア編集長の宮沢洋)は、この施設の国際公開コンペの結果リポートを担当した。磯崎新氏やレム・コールハース氏が審査員を務め、660件の応募を集めるなど、世界的に注目されたコンペだ。

日経アーキテクチュア1995年3月27日号「徹底報告・横浜港国際客船ターミナル国際建築設計競技」の記事の一部
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 担当記者としては世界的なビッグネームが当選することを期待していたが、当選したのは30歳前後、日本では全く無名の2人。「一体どこの誰?」と名前の面では正直、がっかりした。しかし、彼らが提案した案には目が点になった。壁と床と天井の境目が分からない! これは本当につくれるのか?

 実際、コンペ案の実現は困難で、筆者は設計段階でこんな記事も書いている。「横浜港国際客船ターミナル、基本設計半ばで再び座礁」(1997年7月14日号特集「あの事件その後」)。

日経アーキテクチュア1997年7月14日号特集「あの事件その後」の記事の一部。横浜港大さん橋国際客船ターミナルでは、コンペ後、基本設計を2段階に分けて契約。「基本設計その1」が終わった後にプロジェクトが中断していることを伝える記事
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 コンペ時には1999年3月の完成予定だったが、何度かの中断を挟んで施設が開業したのは、約3年遅れの2002年6月だった。

 実現までに曲折のあったこの建築だが、総合3位という結果は、プロセスも含めて建築関係者の記憶に残ったということだろう。建築ジャーナリストの磯達雄氏に、この建築の特質を解説してもらう。
(ここまで宮沢 洋=日経 xTECH/日経アーキテクチュア、以降は磯 達雄=建築ジャーナリスト)

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