日本最大の鉄道会社である東日本旅客鉄道(JR東日本)がMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の実現に向けて突き進んでいる。総延長距離が約7500キロメートルという圧倒的な鉄道網と、電子マネーとしても使えるICカード「Suica(スイカ)」を擁するのが同社の最大の強みだ。半面、鉄道事業への依存度が高く、それ以外のサービスは自前で提供しにくい。様々なサービスを統合したMaaSを自社だけでは用意できないという弱みもある。JR東日本はMaaSという新市場に、どう打って出るのか。

 「JR東日本にとってのMaaSとは、複数のモビリティー(移動手段)を統合して1つの移動サービスとして提供すること。鉄道だけでなく、バスやタクシーなどあらゆる『2次交通』と連携し、お客様のニーズに応えていく」。JR東日本でMaaSを担当する技術イノベーション推進本部ITストラテジー部門の佐藤勲部長はこう語る。

JR東日本技術イノベーション推進本部ITストラテジー部門の佐藤勲部長(左)と、同部門の伊藤健一課長
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 JR東日本は国内最大の鉄道事業者だが、それでも広範囲に及ぶMaaSでは、自社単独でできることは限られてくる。分割民営化後に流通・サービス業など運輸以外の事業を育ててはきたが、依然として売上高の約68%を運輸事業が占めている(2018年3月期)。

 しかも運輸の9割以上が鉄道事業。鉄道だけで利用者の移動ニーズを全て満たすのは無理であり、現状のままでは移動手段を統合したMaaSは実現できない。一方、大手私鉄の場合は、グループでバスやタクシーなど鉄道以外の輸送手段も提供し、自社駅前に乗り入れている。JR東日本の駅前には大手私鉄系や独立系のバスやタクシーが乗り入れているケースがほとんどだ。鉄道事業でライバル関係にある他のグループの運輸会社と連携するには、何らかの工夫が必要だ。

コンソーシアム方式で自前主義を打破

 「当社はこれまで自前主義の発想が強かった。しかし、MaaSの時代は全てを自前でできないのは初めから分かっている。鉄道の競合相手を含めて社内外のあらゆるモビリティー事業者と連携していくことが、当社のMaaSの基本戦略と位置付けている」(佐藤部長)。

 JR東日本はライバルも含めた様々な企業と連携するための仕掛けを入念に作った。2017年9月に設立した「モビリティ変革コンソーシアム」である。MaaSを含む次世代の公共交通について、JR東日本とその他企業や研究機関が連携しながら、モビリティー変革に向けた活動を推進する。技術イノベーション推進本部が事務局を担い、佐藤部長はステアリングコミッティの副委員長を務めている。

 コンソーシアムの会員は2019年2月時点で138社・団体。東京メトロや小田急電鉄、東武鉄道などの大手私鉄や、大和自動車交通や神奈川中央交通といった、JRの駅に乗り入れているタクシーやバスの大手事業者が数多く名を連ねる。MaaSの実現に欠かせないインフラやシステムの構築では、日本マイクロソフトやNEC、NTTデータ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった、ITや通信の業界大手が勢ぞろいしている。

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