全国各地の土のサンプルを分析すると「土の性質」が分かってくる。ただ、それだけでは「土壁の性能」は分からない。実際には、ワラなども混入され、土壁として施工されるときに下地に取り付けられるからだ。土壁の性能を知るために実物大の実験も必要となる。その実験を経て、何が見えてきたのか。土壁が地震力に抵抗する要素とは。土壁研究を続けてきた早稲田大学教授の輿石直幸氏に話を聞いた。(全3回のうちの第2回)

 「土の性質」を調査していた輿石氏は、続いて「土壁の性能」を明らかにすべく、研究を進めた。

 土の性質と並行して、ワラの効果について調べました。「水合わせ」という、土にワラを入れておいて寝かせ、ワラを腐敗させたような状況にする工程があります。ワラを入れてしばらく放置すると、もともとストロー状の中空になっているワラが、バクテリアで分解されて、芯だけが残っていくんです。職人が言うには「水合わせをすると、壁が強くなる」。それも検証してみました。

 まずワラなしの土と、ワラ入りの土を、自由に収縮するようにグリースを塗った木枠に入れて乾燥させます。すると、どちらも収縮して木枠との間に隙間ができますが、ワラ入りのほうが、隙間が小さくて、収縮を低減する効果がありそうだということが分かります。しかし、ワラを入れると土の密度が下がり、逆に土壁が弱くなるんです。

下地に拘束した状態で、土のひび割れの状況を比較したもの。左から、ワラなし、ワラ入り、ワラ入り(水合わせしたもの)。ワラなしのものは大きなひび割れができ、ワラ入りのものはひび割れが細かくなっている(写真:早稲田大学輿石直幸研究室)
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 ただ、実際の土壁は自由には収縮しません。試しに井桁の下地にクギ打ちして固定してみると、ワラを入れていない土は、大きなひび割れができます。それに対し、ワラを入れたものは、ひび割れの数は多くなるのですが、どれも小さなひび割れなので、ひび割れを分散する効果があることが分かりました。そのためにワラは必要なんです。

 そして水合わせしたものだと、一つひとつのひび割れはとても小さくなるんです。つまり水合わせをすると、壁が強くなるということではなくて、正確には、ひび割れをさらに小さくして、ワラを入れたことによって弱くなる度合いを抑えています。ワラが腐敗することで、中空の部分がなくなり、密度が高くなるからだと思います。

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