昔から使い続けられてきた伝統構法は、技術のノウハウが長い時間をかけて伝承されてきたものだ。そのノウハウを数値や成分で説明するのは簡単なことではない。しかし、現代社会においては、物の性能や品質に科学的な裏付けを求められることが多々ある。2003年の告示改正によって、耐力壁としての性能を期待されている土壁にも、そうした検証が求められた。告示改正を契機として土壁研究に取り組むようになった早稲田大学教授の輿石直幸氏に話を聞いた。(全3回のうちの第1回)

職人の伝承技を実験によって検証しているイメージ(イラスト:綿貫 志野)
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 2003年、耐力壁に関する告示1100号の改正によって、土壁などの伝統構法の壁倍率が定められた。このときに0.5倍から1.5倍になったことで、土壁を構造用の耐力壁として用いる機運が高まっていった。

 告示改正の前後から、木構造の先生たちが土壁の構造実験を始めていました。各地域の代表的な方法で名人に土壁をつくってもらって、耐震性能を検証する試験体としていたのですが、揺さぶって壊すと、各試験体で破壊の仕方が違う。その理由が説明できない。そこで、使っている材料をしっかりとトレースしなければならないという話になり、実験で使った土の材料分析を依頼されました。それが土壁を研究し始めたきっかけです。

 ただ、土を調べると言っても、何をやればいいのか。最初は全く分かりませんでした。工業製品のように日本工業規格(JIS)があるわけではありません。地盤工学や陶芸、あるいは農業など、土を扱っている別分野のリサーチ方法を手探りで学びました。結果、分析をすれば、様々な数値は出てきます。しかし、それが何に結び付くのかが分からない。

 つまり1年目は、まず土の性質を知ろうとして研究を重ねたのですが、土壁のことはあまり分からなかったのです。知りたいことは「土の性質」ではなく「土壁の性能」なんだ、ということに立ち返って、2年目からは調べ方を変えました。

試験用の土壁の構造(資料:早稲田大学輿石直幸研究室)
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