スタートアップ企業VOTE FORの悲願は、ブロックチェーンを用いたインターネット投票の実現だ。民主社会の基盤としての投票を、より強化し得る技術と見るからだ。この仕組みを使えば、投票者個人は投票内容を確認できる一方で、それ以外の人物や団体にはシステムの管理者も含めて内容を一切秘匿できる。投票の集計は匿名のまま可能な上、理屈の上では従来のシステムと比べて構築や運用のコストも安上がりになるはずだ。ところが、導入への道のりは決して平坦ではない。2019年度にはネット投票の第一歩として、在外邦人を対象にした実証実験が予定されている。そこでは、今の所ブロックチェーン採用の計画はないという。VOTE FORは、つくば市と協力したネット投票の実証実験などの実績を積み上げ、政府に働きかけていく方針だ。パブリテック(パブリック×テクノロジー)連載の第6回は、同社の取り組みの詳細や、投票にブロックチェーンが必要な理由に迫る。

昨年比で大幅にパワーアップ

 2019年6月25日、つくば市はVOTE FORなどと協力した電子投票の実証実験を8月下旬に実施すると発表した(つくば市の発表資料VOTE FORの発表資料)。両者が連携したネット投票の実証実験はこれが2回目である。2018年8月に、つくば市の「Society 5.0社会実装トライアル支援事業」制度の対象となる企業を選考する際に、市民の意見を集約するためにネット投票の仕組みを活用した(関連記事)。実験では、マイナンバーカードで投票者が本人であることを認証し、専用に用意したパソコンで投票を実施。結果を複数のサーバーに分散させたブロックチェーンに保存して、匿名性を保ちながら集計が可能なことなどを実際に確認した。

2018年の実験で利用したシステム
(画像:VOTE FOR)
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 その結果を踏まえて、今回の実験ではシステムの機能を大幅に強化している。ポイントの1つは本人認証である。前回の最大の課題は、マイナンバーカードの書名用パスワードの入力に手間取ることだった。実験中には番号を5回以上間違えた結果カード自体が使えなくなってしまい、投票会場の市役所でマイナンバーカードの再発行を受けた人もいたという。6〜16文字のパスワードを記憶すること自体が難しい上、パソコンに入力するときに自分が打ち込んだ文字が見えない仕様など、間違いに繋がりかねない要因もある。

 今回の実験ではパスワードの代わりにマイナンバーカードと顔認証の仕組みで本人を確認する計画である。マイナンバーカードの中に保存された顔画像のデータと、その場にあるカメラで撮影した顔画像を利用する。顔認証の技術はNECが提供する。

 もう1つの大きな改善点は、スマートフォンなど多様な端末から投票を可能にすることである。クラウド上に用意した投票システムに、マイナンバーカードのリーダーをつなげたパソコンや、マイナンバーカードの読み取りが可能なNFC機能付きのスマートフォンからアクセス可能にする。これにより、昨年の実績で119人だった投票人数を、2倍以上に増やす狙いだ。

 投票人数の増加に対応できるように、データを保存するブロックチェーンのシステムも強化する。昨年の実験では、データの書き込みに5〜10秒かかることがあり、投票者はその間、待たされる状況があったという。今年は数千人規模の投票者が参加した場合にもなるべく遅延を感じさせないようなシステムの構築を目指す注1)。ブロックチェーンの基盤は、ユニバーサルコムピューターシステム(UCS)が提供する。

注1)昨年は2カ月ほどの期間で投票システムを準備するために、文書類が豊富なイーサリアムを使い、3台のサーバー機にブロックチェーンを保存する方式をとった。今回は、Hyperledgerを使ったシステムを構築する計画。サーバー機の台数などは未定。

2018年の実験では3台のサーバー機にブロックチェーンを分散させた
(画像:VOTE FOR)
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