クラウドへの期待が大きいせいか、「こんなものか」という利用企業の嘆き節が聞かれる。70社の事例を検証すると、クラウドを巡っては「5大がっかり」があることが判明した。

 パブリッククラウドサービスを導入したのに、コストが下がらなかった。クラウドを導入した利用企業からしばしば聞く話である。

 多くの利用企業は、クラウドをコスト削減の手段として捉えている。日本情報システム・ユーザー協会が2018年4月に発表した「企業IT動向調査2018」では、「重視するテクノロジー」としてパブリッククラウド(IaaS、PaaS)を挙げた利用企業にその理由を尋ねたところ、1位は「生産性の向上(省力化・コスト削減)」(53.7%)。2位の「グローバル化への対応」(10.6%)を大きく引き離した。

 しかし、クラウドを導入するだけでコストを削減できるケースは限られる。コスト削減は、利用企業がクラウドに過剰な期待を抱きがちなポイントの一つだ。

 米アマゾン ウェブ サービス(Amazon Web Services)のAmazon Web Services(AWS)や米マイクロソフト(Microsoft)のAzureといった大手クラウドでは、料金体系の異なる様々な機能のサービスを提供している。利用企業がクラウドによってコストを削減するには、サービスを適切に選択した上で、料金体系に合わせて工夫することが求められる。クラウドでもオンプレミス(自社所有)環境と同様に、コスト削減のための地道な改善が必要だ。

 2017年8月にFinTechアプリ用のビッグデータ処理基盤をAzureに構築したある金融機関A社は当初、クラウドサービスの利用料が想定コストに収まらなかった。

 A社はビッグデータ処理基盤に、「Azure HDInsight」という分散処理サービスを使うことにした。HDInsightは「Apache Spark」「Apache Hadoop」といった分散処理のオープンソースソフトをベースにしたクラウドサービスで、性能の拡張性が高い。Azure上にビッグデータ処理基盤を構築する場合に、オーソドックスな選択肢の一つである。

 コストがかさむ原因はHDInsightの課金方式にあった。HDInsightでは、データ処理の実行時間だけでなく、待機中のアイドル時間も課金される。利用する仮想マシン群(クラスター)を作成した時点から、それを消去するまでの時間全てが課金対象になる。

 A社では当初、レスポンスの早さを重視してクラスターを作成したままにしておく構成を考えた。しかし想定を超えるコストが発生するため、工夫を講じた。

ある金融機関が講じた、HDInsightのコスト削減策
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 それは、定期実行するバッチ処理のジョブに絞ってHDInsightを利用し、ジョブごとにクラスターをこまめに起動/削除する仕組みを整えることだ。そのためにジョブ一つひとつの所要時間を見積もった上で、米トレジャーデータ(Treasure Data)の「digdag」というシステム用ワークフローツールを導入。digdagのスケジューラー機能により、HDInsightのクラスターを自動的に作成/削除するようにした。

 クラスターのアイドル時間を最小限に抑えたことで、HDInsightのコストを想定内に収めることができたという。

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