米国が中国の通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)に禁輸措置など強い制裁を取れる背景には、そもそも米国が同社の製品をほとんど使っていないことがある。一方で、米国の技術が今後使えなくなる同社の受ける影響は大きい。

 とはいえ、ファーウェイへの制裁は米国にとって本当にリスクがないのか。国内通信業界の有識者(以下、X氏とする)は、その“副作用”が中長期的に出てくる危険性を指摘する。(高野 敦=日経 xTECH)

米国はもともとファーウェイの製品をほとんど使っていないので、かなり強気に出られているように見えます。

X氏 ファーウェイの基地局については、米国ローカルの通信事業者は導入しているかもしれませんが、大手は使っていません。スマートフォン端末は、そもそも売らなければいいだけの話です。そういう意味で、ファーウェイ製品を扱わないことによる米国のデメリットは極めて限定的です。

 とはいえ、影響が全く無いというわけでもありません。例えば、米アップル(Apple)のスマホが中国市場で売れなくなったら、同社はたまらないでしょう。そういったマイナスの影響は出てくるはずです。

 根本的には、5G(第5世代移動通信システム)が社会システムに入っていくという部分の議論になるわけです。社会システムをインターネット経由で制御したり、クラウドの人工知能(AI)を活用したりするときに、それを担う設備が危なくないとは誰も言えません。

 現行の社会システムはほとんどスタンドアローンで稼働しているので、サイバーリスクとは切り離されています。セキュアだけど、そのセキュアさと利便性はトレードオフの関係です。5Gだからファーウェイが問題視されているように見えますが、5Gよりはインターネットを介してというのが本質で、それをたまたま5Gでやるだけです。

米国はファーウェイの製品を使っていなくても、ファーウェイが1強になったら困るのではないですか。

X氏 社会システムとインターネットがつながっていく流れの中で、全ての設備を米国の言うことを聞く企業で固められればそれに越したことはないのでしょう。それが無いのが痛いところです。端末やOSはありますが。

 そもそも基地局や交換機などの設備が、サイバーセキュリティーとどこまで関係があるのかという話になります。とはいえ、無いのを証明するのは難しいので、その気持ち悪さがゼロにならない限り、米国はそのような言い方を続けるでしょう。繰り返しになりますが、スウェーデンのエリクソン(Ericsson)やフィンランドのノキア(Nokia)だったらいいかといえば、米国はいいとは言いたくないはずです。

5Gで期待されている「ネットワーク機能の仮想化(NFV)」が実現すれば、そもそも専用設備が不要になります。

X氏 その意味で楽天に注目しています。現在、同社が全力でテストしているNFVでは、NECやノキア、米シエナ(Ciena)などのノウハウを使っていますが、設備そのものは台湾の広達電脳(クアンタ)のサーバーです。

しかも他用途からの流用という話です。

X氏 もともとはEC(電子商取引)や金融で使われていたサーバーのようです。サーバーに実装するソフトウエアは何とでもなります。アンテナもクアルコムやNECと一緒に作りました。既存の設備メーカーではノキアは入っていますが、エリクソンは入っていません。大手設備メーカーも仮想化に向けて汎用設備を使うテストはしていますが、できるかどうかと商売が成り立つかどうかは別の話です。

 ファーウェイも含めて、設備メーカーは機器売りから運用・保守に軸足を移してきました。ここで仮想化が進むと、付加価値がソフトウエア側にいくので、参入障壁が下がるでしょう。さまざまな企業が5G向けのソフトウエアを出してきます。

 だからこそ、楽天のNFVが実現するかどうかに注目しています。スケールはクラウドで出せるので、いかに安定させるかという部分に力を注ぐのだと思います。

これからの通信事業者はもう電波を持っているだけになりますか。

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