米国をきっかけに、世界中で巻き起こる中国製通信機器の排除問題。最大の当事者とも言える中国の華為技術(ファーウェイ)が、米国で法的手段に打って出た。ファーウェイは2019年3月7日、米国の「2019年度国防権限法(NDAA2019)」は違憲であるとして、テキサス州の連邦地域裁判所で米政府を提訴したことを発表した。

 米国で2018年8月に成立したNDAA2019の889条では、米政府機関が2019年8月13日以降にファーウェイを含む中国5社の製品や部品の調達を禁じただけでなく、2020年8月13日以降は5社の製品を利用する企業(海外を含む)との取引まで制限した。

 ファーウェイの郭平(グオ・ピン)取締役副会長兼輪番会長は記者会見で「米国は、我々がサイバーセキュリティーの脅威であることを示すいかなる証拠も提示していない。(NDAA2019の)889条は我々の名誉を傷つけ、(米国だけでなく)米国以外の顧客にサービスを提供するチャンスまで奪う。立法手続きの乱用だ」と批判した。一体、何が起こっているのか。

ファーウェイが2019年3月7日に中国の本社で開いた記者会見の様子
(出所:ファーウェイ)
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米国主導も足並みそろわず

 米国における中国製通信機器排除の動きは最近になって始まったことではない。

 ファーウェイは2007年に米スリーコム(3Com)、2010年に米モトローラ(Motorola)の通信インフラ部門の買収をそれぞれ計画したが、米議会の反対を受けて断念。2010年には米通信大手スプリント・ネクステル(Sprint Nextel)への大規模導入を狙ったものの、やはり米議会に阻止された。いずれも理由は安全保障上の懸念である。これ以降も米議会では中国製通信機器を巡る安全保障上の懸念がたびたび取り沙汰されてきた。

 対象はファーウェイに限らず、中国中興通訊(ZTE)も同様だ。米商務省は2017年3月、ZTEがイランや北朝鮮に米国製通信機器を違法に輸出していたとして、11億9000万ドルの罰金を命令。その後、ZTEによる虚偽の申告も判明し、2018年4月には米国企業に同社との取引禁止を命じた。最大14億ドルの罰金や経営陣の刷新などを条件に同社への制裁は解除されたが、米中貿易摩擦も相まって緊張が一気に高まった。

中国通信機器メーカーを巡る米国での主な動き
時期概要
2003年・米シスコシステムズが特許侵害で中国ファーウェイを提訴(2004年に和解)
2007年・ファーウェイが投資ファンドの米ベインキャピタルと共同で米スリーコムの買収を発表するも、米議会の反対を受けて断念
2010年・ファーウェイが米モトローラの通信インフラ部門の買収を計画するも、米議会の反対を受けて断念(その後、ノキア・シーメンス・ネットワークスが買収)
・モトローラが秘密情報の盗用でファーウェイを提訴(ファーウェイもモトローラを提訴して訴訟合戦に発展したが、2011年に和解)
・ファーウェイが米スプリント・ネクステルへの大規模導入を狙うも、米議会の反対を受けて入札できず
2012年・米下院の委員会が「中国製通信機器には安全保障上の懸念がある」とする報告書を発表し、ファーウェイやZTEの製品を使わないようにすることなどを勧告
2014年・米Tモバイルが企業秘密の窃盗でファーウェイを告訴(2017年の判決で企業秘密の窃盗と認められなかったが、契約違反による損失の支払いをファーウェイに命令)
2017年・ZTEがイランや北朝鮮に米国製通信機器を違法に輸出していたとして、米商務省が11億9000万ドルの罰金を命令
2018年・ZTEによる虚偽の申告が判明し、米商務省が米国企業に対して同社との取引禁止を命令
・米商務省が最大14億ドルの罰金や経営陣の刷新などを条件にZTEへの制裁を解除
・米政府機関に中国ハイテク5社の製品や部品の調達などを禁じた「2019年度国防権限法(NDAA2019)」が上下両院で可決

 米国は、「ファイブアイズ(UKUSA協定)」と呼ぶ諜報(ちょうほう)同盟を形成する英国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドをはじめ、欧州各国や日本にも中国製通信機器排除を呼びかけている。

 ところが、必ずしも足並みがそろっているわけではない。米国の要請を受けた政府関係者の発言を受け、さまざまな国で「中国製を排除へ」などと伝わるが、実施に踏み切れば世界でも有数の貿易大国である中国との外交問題に発展しかねない。現地通信事業者による反発も強く、大きく揺れている状況だ。

 例えば英国。2018年まではファーウェイ排除の報道が目立っていたが、2019年2月に状況が一変した。同国の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)が「ファーウェイ製の5G設備を使うリスクを制限する方法はあるとの結論に至った」と、フィナンシャル・タイムズ(FT)などが報じたのだ。その後、中国製通信機器の比率を50%に制限するといった報道が出ている。

 続いてニュージーランド。同国政府は2018年11月にファーウェイ製の5G設備を活用する現地通信事業者の計画を却下したが、2019年2月には一転して「安全保障上の懸念を和らげる選択肢を付与した」とロイターが報じた。同国首相はファーウェイの製品を利用するリスクについて「独自に判断する」と説明したという。

 このほか、ドイツなどでも2019年2月に入ってから「ファーウェイを排除しない」という内容の報道が目立ち始めた。

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