「我々が狙っているのは、米グーグル(Google)や米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services、AWS)と、米データロボット(DataRobot)との隙間にあるポジションだ」。

2019年3月5日に開催した自社イベントに伴う記者会見で登壇したABEJAの岡田陽介社長
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 AI(人工知能)技術開発の国内スタートアップABEJAの岡田陽介社長は2019年3月5日、世界の大手IT企業との競争に飲み込まれないための差異化戦略について、記者の質問にこう答えた。

 ABEJAは社員64人と小規模ながら、企業価値は235億円(2018年10月末、日本経済新聞推定)に達し、未上場のAI企業としてはPreferred Networksの2402億円に次ぐ第2位につける。グーグルや米エヌビディア(NVIDIA)、ダイキン工業、トプコンなどから出資を受けている。

 かつて成功したスタートアップ企業の多くは、まず既存企業がカバーし切れていないニッチ(隙間)市場に狙いを定め、集中的に攻めることでニッチ市場を寡占し、急成長を遂げた。世界で最も激しい開発競争が繰り広げられているAI分野で、ABEJAも成功への軌道に乗れるか。同社の成長戦略を検証する。

創業7年、SaaSとPaaSの両輪で大手に対抗

 ABEJAの創業は2012年9月。深層学習のポテンシャルにいち早く目を付け、店舗内カメラを使った来店者動向分析などのサービスを小売業に提供していた。

 創業6年目の2018年2月、ABEJAは新たなプラットフォーム事業に乗り出した。深層学習を中心とした機械学習のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「ABEJA Platform」の正式版をリリースしたのだ。

 ABEJA Platformは深層学習に関わるデータの収集や学習、デプロイなど一連の工程を省力化できるクラウドサービスだ。岡田社長はABEJA Platformについて、「いわばAIの工作機械だ。顧客企業は工作機械を自ら操り、独自のAIモデルを作成できる」と説明する。

ABEJA Platformがカバーする深層学習の各プロセス
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 ABEJAによるプラットフォーム事業への参入は一見すると無謀な戦略に思える。同領域は米大手ITが激しい競争を繰り広げるレッドオーシャンだからだ。AWSの「Sage Maker」、グーグルの「Cloud ML Engine」、米マイクロソフト(Microsoft)の「Azure ML」などの競合がひしめく。

 だが岡田社長はこの領域には重要な「隙間」があるとみる。「現時点でグーグルやAWSなどが提供するサービスの多くは、機械学習について一定の素養がある技術者にしか使えない。一方、(アルゴリズムの選択や調整を自動化できる)データロボットのサービスは簡単に学習モデルを生成できる半面、アルゴリズムのブラックボックス化を招きやすい」(岡田社長)。

 AIをブラックボックスにせず、かつ専門家でなくても扱えるプラットフォーム――。この「隙間」に岡田社長は勝機を見いだす。

 深層学習フレームワークについては独自開発せず、「PyTorch」や「TensorFlow」といったOSS(オープンソースソフト)を使う。サービスを提供するITインフラは自社保有のほかAWSなど他社のインフラも活用する。

 一方で、データの収集や教師データの作成(アノテーション)、学習、デプロイ、再学習といった一連の工程を省力化し、デプロイと再学習のプロセスを高速に回せるようにする機能については、競争優位を生む源泉として独自開発する。これがABEJA Platformの製品戦略である。

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