AI分野をリードしているのは米中の巨大IT企業だが、レースの勝敗はまだ決まっていない。注目すべき国内AIスタートアップがある。ニッポンAIは捨てたもんじゃない。

 「GAFAM」と「BATIS」という言葉を知っているだろうか。AI(人工知能)分野の代表的プレーヤーを表現するキーワードだ。

 GAFAMは米国の巨大IT企業の頭文字をとった言葉。グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)、マイクロソフト(Microsoft)を指す。

 BATISは、中国の著名IT企業を表す。バイドゥ(Baidu、百度)、アリババ集団(Alibaba Group、阿里巴巴集団)、テンセント(Tencent、騰訊控股)、アイフライテック(iFLYTEK、科大訊飛)、センスタイム(SenseTime、商湯科技)のことである。

 GAFAMとBATISは、AIなどハイテク分野の技術開発力で他社を圧倒。世界をリードし、時価総額8000億ドル(90兆円)の会社が複数あるほどだ。

 一方、日本はどうか。GAFAMやBATISに匹敵する会社は、残念ながら実在しない。ニッポンAIの未来は暗いのだろうか?答えはノーだ。

国内AIスタートアップの例
*企業価値は2018年10月末時点、日本経済新聞の推計に基づく
企業名 創業日 推計企業価値* 主力分野
Preferred Networks 2014年3月 2402億円 交通、製造、バイオへのAI応用
ABEJA 2012年9月 235億円 小売りへのAI応用
ENECHANGE 2015年4月 82億円 電力料金の比較、AIによる電力使用解析
シナモン 2016年10月 69億円 AI-OCR(紙文書のテキスト化)
LeapMind 2012年12月 60億円 組み込み機器向け軽量AI
SENSY 2011年11月 57億円 ユーザーの感性を分析するAI
Arithmer 2016年9月 54億円 AI-OCR(紙文書のテキスト化)
エクサウィザーズ 2016年2月 53億円 介護やHR分野へのAI応用
オルツ 2014年11月 48億円 対話エンジン
Idein 2015年4月 44億円 組み込み機器向け軽量AI

 ABEJA(アベジャ)やシナモン、LeapMind(リープマインド)、Preferred Networks(プリファード・ネットワークス、PFN)…。GAFAMとBATISに比べれば、無名で小規模だが、注目すべきAI企業は国内にも存在する。

 これらの国内AIスタートアップ勢は、したたかな戦略でGAFAMとBATISに負けない独自のビジネスを構築しつつある。

 図をみてほしい。AIビジネスの基になる技術は「プラットフォーム」「アルゴリズム」「アプリケーション」といった3つに大別できる。例えばグーグルやマイクロソフトは3つの領域で技術開発を進めている。ビジネス面では、どの業界でも使える汎用的なアプリケ―ションの開発、提供に力を入れる。

特定業種向けのAIアプリケーション開発で、ニッチ領域を攻める
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 これに対し、ここ数年で企業価値を高めている国内AIスタートアップの戦略は異なる。汎用的な分野だけでなく、製造、物流、小売などの特定業種に向けたアプリケーション分野のAI製品・サービス開発に注力する。

 こうした戦略を取る理由は単純明快。GAFAMとBATISにとって手薄な領域だからだ。業種特化のAI製品・サービスは、顧客ニーズは高いものの、米中AI大手の製品・サービス開発が行き届いていない領域である。

 マイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業にとっては、業種特化型のAI製品・サービスの市場は1つひとつが小さいため、大きな売り上げを見込める汎用AI製品・サービスの開発を優先しがちだ。この点に国内AIスタートアップは目を付け、一見“地味”な領域でトップの座を目指しているわけだ。

 国内AIスタートアップで注目すべきは、これまでの国内IT企業とビジネスモデルが異なる点である。AIシステムの受託開発で稼ごうというのではなく、強いAI製品・サービスを開発し、世界に拡販しようと意気込む。

 そのためにも、まずはニッチ市場でトップに立つ。徐々に領域を広げ、いずれ巨人を打ち倒す──。そんな成功ストーリーに向けて、ビジネスを進めている国内AIスタートアップの正体に迫る。ニッポンAIはまだ捨てたもんじゃない、と思えるはずだ。早速、ABEJAの戦略から見てみよう。

ABEJAは業種特化型SaaSで勝負

 「マイクロソフトやグーグルと同じレイヤーで勝負することは考えていない」。ABEJAの技術戦略を練るCorporate Officerの菊池佑太氏はこう語る。

ABEJAの菊池佑太Corporate Officer
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 かつては顧客企業ごとにカスタマイズしたAIシステムを開発・提供していたABEJA。現在は2種類のAI関連プロダクトを開発・提供している。

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