急速に進歩するクルマの自動運転技術の中で、LIDARがセンサー技術のトレンドの1つになりつつある。LIDARによって実現できることや、自動運転はどのように進化するのかを考えつつ、LIDARを含めたさまざまな車載センサーの利害得失や活用のためのポイントについて、最近の話題や応用例を含めて俯瞰する。

高精度に距離を計測できるLIDAR

 LIDARは、レーザー光のパルスを対象物体に照射し、その反射光を測定して、物体までの距離を計測する技術である。対象物体に照射した光が反射して受信されるまでの“光の往復飛行時間”注2)を用いて、距離を算出する(図3)。レーダーを用いた距離の計測方法と同じだが、通常のレーダーと異なり波長の短い赤外レーザー光を用いるため、前後左右の距離分解能が高い。周辺環境を非常に鮮明に捉えられるため、自動運転技術では標準的なセンサーになってきている。

注2)光の飛行時間はToF(Time of Flight)と呼ばれる。また、これを用いて距離を計算する方法をToF法という。家庭用ゲーム機のコントローラーに使用されて、よく知られるようになった。
図3 LIDARの仕組み
近赤外のレーザー光を対象物体に照射し、反射光を捉えて、往復時間から距離を算出する。前後左右方向の距離分解能が高い。また、計測精度の距離依存性が低く、距離によって精度の変化が少ないという特徴がある。なお、次世代LIDARではやや波長が長い(1500nmなど)領域のレーザーを用いたシステムが研究されている。
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 具体的には、レーザーポインターに似た装置で近赤外域に相当する波長900nm程度のレーザー光を生成し、フラッシュのようにパルス状に照射して、その反射光を受信機で捉える。光の往復飛行時間は極めて短く、受信する光は減衰するため、いかに高分解能かつ好感度でレーザー光を検出できるかがポイントになる。レーザー光をさまざまな方向に照射する(走査する)ことで、広範囲にわたって状況を捉えられる。

 LIDARを用いて3次元空間を把握した例を、図4に示す。対象物体までの距離を計測するだけでなく、対象物体の表面の反射率を捉えることもできるため、道路ペインティングの読み取りなどにも応用できる。

図4 LIDARが見た周りの世界
(a)3次元空間の把握では、縦に64本並べて放射したレーザー光の反射を捉え、路面からの垂直構造を把握している。(b)道路ペインティングの読み取りでは、路面に描かれた白線や文字を画像として捉えている。いずれも、昼夜を問わずに認識できる。
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 以上のように、LIDARには、分解能の高さ、計測距離の長さ、距離による精度変化の少なさなど、さまざまな長所がある。一方、光を用いるために、雪や霧に弱いという難点がある。

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