2019年10月26日、27日に開催された「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2019」(イケフェス大阪2019)。リポート3回目も、設計事務所6社が連携した「セッケイ・ロード」の様子を、各社の設計により関西で進行中のプロジェクトの紹介を交えてお伝えする。

 設計事務所6社を西から巡り、前々回は遠藤克彦建築研究所と久米設計を、前回は日建設計と日本設計をリポートした。5件目、6件目に訪ねたのは、セッケイ・ロードの東側に位置し、ともに大阪発祥の東畑建築事務所と安井建築設計事務所だ。東畑は2017年から、安井は初めて開催された2014年から、イケフェス大阪に参加している。

1本の道路沿いに6つの設計事務所が立地する「セッケイ・ロード」は、北船場の高麗橋通りを中心とした東西のエリアだ。写真は日本設計関西支社から東畑建築事務所に向かう途中で、れんがの建物の左側に延びるのが高麗橋通り。れんがの建物は辰野片岡建築事務所が設計した高麗橋ビルで、現在はオペラ・ドメーヌ高麗橋というブライダル会場。この建物もイケフェス大阪に参加していた(写真:長井 美暁)
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東畑事務所の創業者が50年前に思い描いた大阪の未来

 まずは東畑建築事務所へ。

 同社は創業者の東畑謙三が収集した世界有数の稀覯本(きこうぼん)コレクションの一部を、初参加の17年から毎年披露している。19年は伊能忠敬の「日本東半部の沿海地図(写本)」を初公開した。

東畑建築事務所の創業者、東畑謙三は、技術研さんに役立てるために、世界各地の建築や絵画、彫刻、考古学などの文献や古地図を収集し、「清林文庫」と名付けた。総数は1万5000点に上るという(写真:長井 美暁)
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東畑建築事務所が設計を手掛けたプロジェクトを写真パネルで紹介するコーナー。2018年は2日間で約700人の来場だったのに対し、今年は初日だけで600人を超えた。「イケフェス大阪の参加者はマナーが良く、展示を熱心に見てくれるので、開催にこぎ着けるまでの苦労が報われる。参加して良かった、と毎年思う」と担当者(写真:長井 美暁)
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 目を引いたのは、「東畑謙三が50年前に思い描いた大阪の未来」と題する模型の展示だ。木造建築物が密集していた大阪駅の南側地区において、東畑謙三は大阪駅前市街地改造事業の当初のマスタープランを描いた。模型は1961年に示されたその当初計画を再現したもので、同事業によって整備されたのが、地上1階部分の周囲に巡らせたポルティコ(回廊)や高層部のセットバックが特徴的な大阪駅前第1ビルから第4ビルまでの4棟だ。

東畑謙三は、高層ビルの圧迫感をどう軽減するか、モータリゼーションの進展にどう対応するか、巨大な駅前ビルに集中するおびただしい人と車をどうさばくか、といった問題意識を持ち、様々なアイデアを計画に盛り込んだ。3階の屋上に駐車場を設けて高層部を後退させる基本的な構成や、雨に濡れずに歩ける1階のポルティコ(回廊)などは、現在の姿に見られる通り、当初のビジョンが貫かれている。一方、3階レベルの高架道路は阪神高速道路との連結を想定していたが、これは実現しなかった(写真:長井 美暁)
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各社共通の展示「私のこの一冊」にも力が入る(写真:長井 美暁)
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東畑建築事務所が設計を手掛け、京都府亀岡市に2019年12月竣工予定の「京都スタジアム(仮称)」は、「みんなの笑顔がきらめくコンパクトスタジアム」がコンセプト。最高の観戦環境の創出、周辺環境への影響の最少化、ライフサイクルコストの低減を実現する計画だ。敷地形状に合わせて四隅を大きく切り取った八角形のスタンド形状によって、効率的に観客席数を確保。全ての観客席を覆う屋根は、スタンド先端からさらに2m突き出し、雨天時も快適に観戦できる。高さを抑えた屋根の多面体の構成や台形のシルエットは、亀岡盆地の山並み風景との調和を図っている(写真:東畑建築事務所)
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 同社は、設計事務所の存在が一般に知られることと、関西の建築界の活性化を期待して、イケフェス大阪に参加しているという。

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