東京の都心部の大改造は、都市再生特別地区そして都市再生緊急整備地域を舞台とする大規模都市開発により、劇的に進展した。その制度の制定から15年以上経過するが、これを越える大都市再生のための制度は生まれていない。その歩み、現在抱える問題点および今後の展開の可能性を、元・国土交通省国土交通政策研究所所長の佐々木晶二氏に2回に分けて解説してもらう。

近年の都市開発の推進力となってきた「都市再生特別措置法」とは、どんな法律ですか?

 国が2001年5月、内閣に都市再生本部を設け、内閣官房に都市再生本部事務局を置いたのが発端です。東南アジアにおける都市間競争の激化が起こっているという状況認識の下、当時の小泉内閣(第一次)が経済政策の柱に据えた取り組みでした。

 この都市再生本部は、小泉内閣における公共事業の圧縮、民間事業者の力の活用、そのための規制緩和などを内容とする「経済構造改革」を打ち出します。大都市の発展を支えるインフラを重視し、設置直後から「東京臨海部の基幹的防災拠点」や「大都市圏における環状道路体系の整備」などの「都市再生プロジェクト」を決定していきました。

 これら都市再生プロジェクトの決定と並行し、都市再生本部事務局が準備に着手したのが「都市再生特別措置法案」です。大都市再生を目的に、規制緩和措置と金融措置を集中的に実施するための法的な枠組みを整備しようとするものでした。国会の審議を経て、2002年に都市再生特別措置法が成立します。

 都市再生特別措置法の基本的な枠組みは3つに整理できます。
(1)国および地方公共団体が集中して都市再生施策を実施する地域として「都市再生緊急整備地域」を定める。
(2)「都市再生緊急整備地域」においては、抜本的な土地利用規制を緩和する「都市再生特別地区」を都市計画決定する。
(3)「都市再生緊急整備地域」(下表)においては、国が金融支援措置を重点的に実施する。
──というものです。

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都市再生特別措置法の運用の考え方
(国土交通省の資料を基に作成)

 同時に、速やかに事業を進めるため、「都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域」すなわち都市再生緊急整備地域における市街地再開発の事業認可の処理期間を3カ月以内と定めました。また、都市再生事業者(主に、いわゆるデベロッパー)からの都市計画提案を可能とし、それに対して行政が6カ月以内に応答するよう義務付けたほか、第二種市街地再開発事業については施行者に株式会社を追加する──など都市再開発法の改正を行っています。

2000年代の前半に、なぜ都市再生のための新しい仕組みが生まれたのですか?

 1つには、やはり東南アジアでの都市間競争の激化が関係します。

 1990年代前半のバブル経済の崩壊以降、日本全体の景気が停滞するのに対し、東南アジアにおけるシンガポール、上海の成長が顕著になってきました。東京は、東南アジアにおける拠点都市としての位置付けを脅かされる立場になってきたわけです。これは、いわゆる都市競争力の指標となるデータでも、また、東京証券市場における外資系企業の上場数の激減という事実からも明らかでした。このため、2000年代の初頭、東京など大都市の都心部を東南アジアの中枢拠点として再生しなければいけない、と国が認識するに至ったわけです。

 もう1つ、臨海部、いわゆる臨海副都心の開発という課題がありました。

 臨海部の開発の起爆剤として計画された世界都市博覧会が1995年、当時の青島幸男都知事の決断によって中止されています。それでも東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ、95年開業)や東京国際展示場(東京ビッグサイト、同96年)、フジテレビ本社ビル(現FCGビル、同97年)などの開業が続き、さらに商業施設の整備も進んでいました。この臨海部の開発については、青海、有明、晴海、豊洲などが、それぞれ再開発地区計画(現在は「再開発等促進区を定める地区計画」)を活用する地区とされていましたが、より開発の速度を上げる必要に迫られていたのです。

「世界都市博覧会」中止後の東京臨海副都心の様子を振り返った日経アーキテクチュア記事(2001年6月25日号)(資料:日経アーキテクチュア)
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