2002年の都市再生特別措置法制定後、都市開発は、大方針なき個別の「プロジェクト型」にシフトした。その中で切り札となってきた容積率緩和、そしてハード指向を、そろそろ見直す時期ではないのか。4人の論者による座談会の最終回。

(写真:澤田 聖司)
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藤村 例えば上野のように、都市再生の勢いに少し乗り遅れたようなエリアをどうご覧になっていますか?

奥森 変わらないほうがいいと思います。

村木 どのまちも渋谷のようになる必要はありませんよね。

奥森 絶対、駄目です。浅草や上野は、いつまでたっても元の浅草や上野でなければいけない。それが強いブランドになるのは間違いありません。

村木 変わったら、外国から人を呼べないまちになってしまいますからね。

藤村 国鉄からJRに民営化(1987年)された直後に、再開発計画が動き、結局は頓挫しましたね。磯崎新さんの設計で高さ300メートルのタワーを建設する計画でした。他のエリアのように千何百%容積率の開発は不要だとしても、まちとしての課題はあるはずですから、身の丈に合った形で新しいプロジェクトの在り方は模索されてもいいのかなと思います。

 渋谷から大学のある上野に移ってきたら、住みやすいんですよね。緑があって池があって、買い物も便利で意外にスペックが高い。それに駅としては新幹線が発着するのは東京か品川、それから上野しか無い。新幹線ターミナルのポテンシャルを全く使っていないまちというのは珍しい。

奥森 国立の文化施設があれだけ集約されているエリアは、他にありません。どんな都市でも、もう少し分散していますよね。だからポテンシャルは非常に高い。それを生かし切れていないという課題はあるかもしれません。

 上野の場合は結構、地形が特徴的です。国立の施設は全部高台にあって、他の部分とは段差があるので、まち全体としては分断されている。その真ん中にJRの線路と駅があって、さらに首都高がある。大規模開発は必要ないとしても、そういう地形を乗り越えて一体化させるような議論はあり得ると思います。

藤村 上野公園や動物園にはたくさん人がいるにもかかわらず、まちとつながっていないなど具体的な空間的な課題を抱えています。今後の東京の都市再生を考えるときに、上野のような具体的な課題を抱えている場所はたくさん残っている。2000年代からの都市再生の輪が2020年代にようやく、そうした所にだんだん波及していくのかなと見ています。

日本建築学会の会誌「建築雑誌」2018年5月号(特集「巨大建築でまちをつくる/かえる」)、19年1月号(特集「ポスト・オリンピック・シティ~臨海部からみた東京の2020年以後」)(資料:日本建築学会)
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奥森 いろんなものが同時並行で動く、そういう多様性が東京の1つの利点であるのは間違いありません。ただ、みんなが同じような方向を追い求めても成熟した都市とは言えないから、上野などには特に個性化が求められる。これは言うはやすしで、実行するのは大変なんですけれどね。

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