都市開発に関し、行政としての東京都の強力なイニシアチブが欠けると指摘される中で、その整備の進展に課題を残していた臨海部。東京五輪のレガシーとして、どのような活用が可能なのか。4人の論者による座談会の第3回。

(写真:澤田 聖司)
[画像のクリックで拡大表示]

藤村 前回のオリンピックのレガシーとして、神宮外苑から渋谷を通って駒沢公園に至る都市軸の整備が進みました。鈴木(俊一)都知事の時代(1979~95年)になると都庁を新宿に移転し都の中心、霞が関を国の中心、臨海副都心をアジアの中心と再定義し、新宿から臨海副都心へ都市軸をつくろうとした。その後は大丸有や六本木、渋谷など陸部の方に重心が戻っていましたが、今回のオリンピックを機に80年代を思い起こすような形で、虎ノ門から環状2号線に沿って臨海部に新たな軸線が引かれています。大都市が、そうした戦略軸を持つのは悪くない。差し当たっての成果ではないかと思うんです。

澤田 もちろんです。

奥森 オリンピックの影響としては、新国立競技場が新たにできる神宮外苑のような前回からのレガシーゾーンと、今回のレガシーゾーンとなる臨海部、それぞれどんなまちをつくっていくかという議論が進むはずです。こうした場所を開発する命題として、さっきの成熟というキーワードが非常に重要になる。その言葉に耐え得る開発にどのように高めていけるか。それが2020年代のポイントだと思います。

 例えば神宮外苑は、これからスポーツ施設を再配置し、都心型の新しいライフスタイルの拠点になっていくはずです。

澤田 既存施設の機能拡張が中心なので、失敗するリスクの小さいエリアですね。

奥森 質の高い暮らし方の1つのモデルになるはずです。一方の臨海部では、それと違うものを生み出さないとエリアの価値が高まらないと思います。

村木 例えばロンドンのオリンピックパークは、誰も開発したくない、誰も行きたくないとされていたところに新しい価値をつくったわけです。そう考えると、東京の臨海部って、その先は何もない海じゃないですか。わざわざ行くという価値が、まだないんですよ。

奥森 水辺であるというのが、非常に重要ですよね。駅の話と同じで、河川とか港湾とかの縦割りがあって、規制でがんじがらめになっていたところに、いろんな場所で実験的な面白い試みが生まれるようになっている。その水辺のところがより魅力的になっていけば「東京は変わった」と実感できるはずです。

村木 交通手段は依然として課題ですし、航空法の高さ制限などもあるので民間にとっての開発メリットを生み出しにくいのは確かですよね。たくさん空地があるようでも半分は道路と公園なので、限られた土地を有効に活用しないといけない。その辺を打開するアイデアが、いまひとつない状況です。

藤村 臨海部というのは、都市計画区域と港湾区域の間にあるわけです。「東京臨海論」という著書のある早稲田大学の渡邊大志さん(建築学科准教授)は、港湾施設の縮小に伴って生まれる空地に容積率緩和のような内需型ではない新しい経済空間をつくれないかと提案しています。

 かつて定期借地権方式で臨海部にできた施設も次のフェーズをどうするかという時期に入る。そのタイミングで、都市でも港湾でもない領域だから可能になる臨海というコンセプトを使い、新しい都市像を示す必要があるんじゃないか、と。そのときにプレーヤーはいったい誰なのかという話になってきます。

村木 結局は民間の力が必要になる。

奥森 ただ、インフラ投資をどこまでやるかは東京都の決めるところです。

村木 現状は交通が一番の課題ですからね。今のまま全部の建物が立ち上がったら対応できません。

奥森 都心部との間の地下鉄新線をどうするかという議論も、これからですね。

澤田 そういうインフラの実現までに、また10年、20年かかる。ロングタームの議論は必要なんですけれど、20年後にはいないかもしれない世代の人たちで、それを審議するのが日本というのはユニークだなと思いますね(笑)

村木 東京ベイエリアビジョンの議論には、今のところ若手に入ってもらっていますよ。

澤田 それはいい。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら