大方針なき個別の「プロジェクト型」にシフトしてきた東京の都市再生。その中で、鉄道など交通インフラと連携したインテグレート型の開発は、日本独自に発展した成果だとされる。今後の東京を展望する、4人の論者による座談会の第2回。

(写真:澤田 聖司)
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澤田 私自身、正直に言って、東京都がどういう具体的な都市戦略を持っているのかを十分に理解していません。全体計画に対する認識もありません。都という大組織ゆえに、少なくとも渋谷区に何を求めているのかはなかなか伝わってきませんね。

 と言っても何らかの役割を果たす必要がありますから、その意味において、渋谷区のミッションというのは明確です。国際競争力の先鋒(せんぽう)として、世界の中でイノベーションハブとして抜きんでた都市になるよう、スタートアップ・エコシステムの構築を続けていきたい。そのために必要なソーシャルスペースやパブリックスペース、レジデンスの在り方は、どのようなものか?そのために必要なスペースデザインは、どのようなものなのか?という発想です。

 可能性として、IT企業に公園を経営してもらう、などの大胆な発想が生まれてきます。従来、IT企業は公共サービスに関わっていませんでしたが、その結果として、既存の公園というのは全くテクノロジーが実装されていない場所になってしまっているんですよ。

 18年4月に、産官学民の連携による一般社団法人渋谷未来デザインという、17社の民間企業と行政が共創する組織を立ち上げました。渋谷区が45%程度を出資している類のない取り組みで、まちづくりの活性化や渋谷区ビジョンの具体化のための機能を担ってほしいと期待しています。それによって様々なテクノロジーを持つ資源(人財・サービス・資金・情報)を集め、渋谷区で様々な社会実験をできる環境を実現したいと考えています。

産官学民の共創の場となる「渋谷未来デザイン」(一般社団法人)の組織図(資料:渋谷未来デザイン)
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藤村 今の澤田さんの話が、まさにこの25年間を象徴しているんです。渋谷区は恐らくプロジェクト型「都市再生」のトッププレーヤーだと思います。しかし、それは危機的状況にあった渋谷駅の耐震や防災の性能をどう向上させ、渋谷がまちとして大丸有(大手町・丸の内・有楽町地区)にどう対抗するかという話で、東京の全体像の話ではない。

奥森 プロジェクト型の都市開発の功罪を挙げるときに“罪”の部分が言われやすいんですけれど、むしろ僕は肯定的にみてよいと思っています。

 欧米と比較して一番感じるのはアジアの都市の人口密度というか活動密度というか、圧倒的な人の多さ、その高密さですよね。それを考えると単一の方向性を明確にしながらつくるという以上に、複数のものが同時並行的にエナジェティック(精力的)に進むような在り方が重要です。一面として無計画ではありながら、その点では東京は、うまくいっている部分もある。アジアの成熟都市というのは、そういう形で進んでいくんじゃないでしょうか。

 要は一番活動密度の高い駅前の空間というのが、日本では何十年も手付かずだった。行政の縦割りの中で建築、土木、交通が分かれてしまい、見えない壁に阻まれて一番触りづらい場所だったんです。それが、やっと動かせるようになったのが、この10年、20年。それで東京駅だったり渋谷駅だったりの開発が進み、今は新宿だったり品川だったりに展開されている。

 それが進展しているのは、逆に東京というのが、スプロール(虫食い状の無秩序な拡大)しすぎだったわけです。

村木 世界の中で、ここまでスプロールしている都市はないんですよね。

奥森 どうしてロンドンの都市の再生が進んだのかといったら、やっぱりスプロールさせずに需要をコントロールできているからです。一方の東京は、真ん中の都心の密度も低いし、駅前の密度もニューヨークなどと比較して決して高くはない。それを、ぎゅっと寄せるという意味では、プロジェクト型の都市開発というのが非常に効果的だったと思います。

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