ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)がもくろむハードウエアとソフトウエアを分割する新しい車載電子プラットフォーム(基盤)「E3」。

 開発に成功すると、それぞれ異なる企業に発注する新しい部品供給網を構築できる。ソフトの投入頻度を早めて、モビリティーサービスの競争力を高められる。

VWはモビリティーサービスに舵(かじ)を切る
「We」と呼ぶブランドを立ち上げて取り組む。(出所:VW)

 新しい部品供給網が始まると、とりわけ影響を受けるのが1次部品メーカー(ティア1)である。これまでハードとソフトを一体で納入することで、部品の付加価値を高めてきた。分割発注になれば、「ハードだけを手掛けるティア1は、もうからなくなる」(外資系ティア1幹部)。

 ハードの“おまけ”だったソフトが、複数のECUを統合して新機能を生み出す付加価値の源泉になる。ハードを受注した企業は、ソフトを手掛ける企業の要求に従う「下請け」になる可能性が高い。ハードではなく、ソフトを受注できるか否かがティア1の今後を左右する。

 メガサプライヤーと言われる大手ティア1は、ハードとソフトの分割発注時代に備え始めた。先頭を走るのが、ドイツ・コンチネンタル(Continental)である。

 VWに納入する中央コンピューターの開発で先んじる。さらにM&A(合併・買収)を駆使して、主要機能を統合制御する大規模ソフトの開発能力を強化してきた。

 2015年にソフト開発企業であるフィンランド・エレクトロビット(Elektrobit)の自動車部門を買収し、大量のソフト技術者を確保した。2017年には自動車セキュリティーのイスラエル・アルグス・サイバー・セキュリティー(Argus Cyber Security)を買収し、エレクトロビットに加える。同社には現在、約3000人のソフト技術者がいるとされる。

 技術者の確保と併せて、ソフト単独を納入できる新しい組織体制を構築する。競合するティア1とも取引する異例の商流を見据えた。

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ソフトとハードの分割発注に備えるコンチネンタル
エレクトロビットとアルグスを買収したが法人としては別会社にした。ソフトだけを完成車メーカーや競合の部品メーカーにも納入できる仕組みを作る。ソフトの受注獲得競争という点では、エレクトロビットはコンチネンタルと競合することもいとわない。

 エレクトロビットを別会社にすることに加えて、親会社であるコンチネンタルとの間で情報を完全に隔てる仕組みにした。「エレクトロビットの社内情報システムなどは、全く別にしている」(コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンでボディ&セキュリティ日本OEM統括責任者の青木英也氏)と徹底する。

 例えば、コンチネンタルと競合する部品最大手のドイツ・ボッシュ(Bosch)に、エレクトロビットが自動運転ソフトを納入することまで想定する。ボッシュが自社のハードと組み合わせて、完成車メーカーに納入する。別会社として完全に隔てることで、競合企業とエレクトロビットの取引情報が、コンチネンタルに伝わる懸念を払拭したわけだ。

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