崩壊の顛末(てんまつ)

 金属製品を加工している工場がある。これをR工場と呼ぼう。R工場では切削機や加工機などの工作機械を使い、金属材料を顧客の要求仕様に合わせて加工している。熟練者が多く在籍しており、その技術には業界でも定評があった。

 R工場では長年、新しい社員を増やすことなく生産を続けてきた。そのため、現場の多くの作業者は60歳前後の熟練工となっており、最も若い作業者ですら40歳代になっていた。こうしたベテラン作業者が、顧客からの難しい要求にも全て対応していた。

 ところが、作業者の高齢化にはあらがえず、退職者の補充要請が強くなってきた。加えて、生産量の増大により不足している人員の充足も急務となった。ただ、大きな音で機械が動き、切削油の臭いが漂う、いわゆる昔ながらの作業現場は若者には好まれないのだろう。募集しても応募してくれる人は少なく、採用活動は困難を極めた。しかし、苦労の甲斐あって、ようやく意欲の高い若者を採用することができた。

(作成:日経 xTECH)
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 工場長は、採用した若い新人作業者が技能教育を経て、一刻も早く実務で活躍してくれることを期待していた。そのために技量の優れたベテラン作業者を指導係に任命し、教育を始めた。ところが数カ月ほどたったころ、採用したばかりの新人作業者が急に辞めると言い出した。何度も慰留したが翻意させることはできなかった。急きょ再募集し、やっと別の新人作業者を採用。そして、その新人作業者にも同様にベテラン作業者による作業教育を始めた。ところが、その新人作業者も数カ月もたたないうちに辞めてしまった。

 工場長は、ベテラン作業者に「何か思い当たる節はないか」「気づいたことはないか」と問い掛けた。しかし、「なぜ、もっとまともなやつを採用しないのですか!」と、逆に食ってかかられてしまった。採用難とはいえ、安易な採用をしたわけではない。しっかりと面接して、この人なら頑張ってくれるだろうと確信を持てた人を採用したつもりだ。ところが、ベテラン作業者からは酷評の嵐だ。この問題を解決しなければ、次にまた新しい作業者を採用しても同じことになるのではないかと、工場長は危機感を覚えている。

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