崩壊の顛末(てんまつ)

 高度なスキルを持った作業者の技能で生産をしている工場がある。この工場をQ工場と呼ぼう。Q工場では、ベテラン作業者が優れた技量を持っていたため、これまで作業のやり方について、あえて標準化などを強く推進することなく、ベテラン作業者に任せる形で進めてきた。作業標準書は存在しているが、実際の作業ではベテラン作業者が過去の経験で培ったノウハウを駆使して作業しており、作業標準書は形式的なものになっていた。

 だが、Q工場でもベテラン作業者の高齢化による世代交代は避けられず、若手作業者が徐々に増えていた。ところが、ベテラン作業者に若手作業者を教育させると困った事態が発生した。作業の手順や作業上の注意点が、ベテラン作業者によって微妙に違ったのだ。

 若手作業者は、一体どの作業が正しいのか混乱した結果、ベテランAさんと作業をする際はAさん流の、ベテランBさんと作業をするときはBさん流のやり方に合わせて使い分けるという妙なことが水面下で発生した。また、若手作業者の中には、ベテラン作業者からの具体的な作業指示がないため、見よう見まねで作業するものの、ことごとく駄目出しされてしまい、すっかりやる気をなくしてしまった者も出てきてしまった。

(作成:日経 xTECH)
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 こうした状況に陥ったQ工場で、工場長の交代が行われた。新任の工場長は、若手作業者に適切な作業をしてもらうためには、ベテランの口頭伝承による教育ではなく、適切な作業標準書が必須であると考えていた。工場長は、まず既存の作業標準書があるならば、ベテラン作業者も含めて全員にそれを徹底するように指示した。

 この指示は、それまで満足する指導を受けてこなかった若手作業者に好意を持って受け入れられた。しかし、ベテラン作業者は自己流のやり方を曲げず、作業標準書を守らなかった。工場長は「この工場は作業者が指示を守らない、モラルに欠けた工場だ」と判断し、指示を守らないベテラン作業者に対して厳しい指導を開始した。ところが、ベテラン作業者はこれに激しく反発。工場長とベテラン作業者が対立し、険悪な雰囲気になってしまった。

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