崩壊の顛末(てんまつ)

 幅広い顧客ニーズに合わせて多品種少量生産を行っている工場がある。これをO工場と呼ぼう。O工場の生産現場では、製品ごとに異なる多種多様な治工具や材料、備品類が置かれ、手狭(てぜま)な状況になっていた。その上、生産が終了した製品に対しても、メンテナンスや保守を求められることがあるため処分できないものが多く、ものの増加に拍車をかけていた。

 ものであふれかえった現場に問題を感じた工場長は、生産現場の5S活動を推進することにした。現場の作業者たちも、足の踏み場もないほどさまざまなものが散乱した工場は良くないと感じていたため、工場長の発案した5S活動の推進に前向きだった。O工場の生産現場は狭く、ものが無造作に山積みになっている場所が至る所にあった。その上、ものを置くべき場所がきちんと決まっていたわけでもなかった。現場ではこれらの点を改善すべき箇所と認識し、棚をいくつも購入してきれいに並べて、どこに何があるのかを分かりやすいように表示する取り組みが進められた。

(作成:日経 xTECH)
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 ところが、工場長が代わって新任の工場長が就任した時から事態は一変する。新しく赴任してきた工場長のA氏が工場の中を見ると、確かにものの位置は定まっていたが、よく見ると「とにかくものが多い」という印象だった。ものであふれた現場では、あらゆる作業にムダが発生するため、A氏は実態を知る必要があると考えた。

 そこで、現場の作業を観察し、棚やものの置き場などがどのように活用されているか調査してみた。すると、頻繁に使われるものと、この数年使われた形跡が全くないものとが混在して置かれていることに気づいた。そこでA氏は、現場の作業者に5S活動の「整理」をもう少し進めてみようと提案した。

 しかし、現場からは意外な声が返ってきた。「工場長はよくご存じないのかもしれませんが、現場にあるものは、全て必要なものばかりです。これ以上、整理するのは無理です」。反発は根強く、O工場ではそれ以降、生産性が上がらなくなってしまった。

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