崩壊の顛末

 多品種にわたる製品を生産している工場がある。これをJ工場と呼ぼう。J工場では、顧客からの注文に応じて、毎日、数十品種の生産を行っている。材料の調達には一定のリードタイムが必要であるため、生産開始から出荷までに数日かかる。従って、顧客からの発注や内示を基に計画的な生産を行っている。

 J工場の製品は、顧客の要求仕様に基づいて設計・生産しているので、注文を受けたその日に出荷するといった厳しさはないが、それでも生産計画に影響する想定外の事態が発生する。例えば、急な納期変更(納期を1週間前倒してほしいといった要望)などだ。当初よりも納期を前倒しする要請を受けると、計画に基づいて生産準備をしていた工程を大幅に組み替える必要が出てくる。そのため、資材部門から生産工程まで全体がバタつくことになる。急な納入数量の積み増し依頼(当初の発注数よりも100台追加といった要望)も同様だ。

 「想定外」の事態とはいえ、現実にはこうした事態は頻繁に起こる。そのため、J工場では工程がバタつくことが日常茶飯事になっていた。想定外の突発的な事態(突発事態)が発生すると、J工場では数人のキーパーソンがすぐに集まって対応を協議し、全員が力を合わせて何とか出荷を維持していた。それがJ工場の自慢であった。ところが、ある時を境にJ工場は崩壊の道をたどることになる。

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(出所:日経 xTECH)

 きっかけは、生産の大幅な増加だ。会社にとってはありがたいことだが、顧客の旺盛な需要により生産量が急激に増加した。それに伴い、急な納期変更や納入数量の積み増し、さらには標準納期を待てない特急対応などが頻発するようになった。

 度重なる計画の変更により、J工場の中では、計画変更に伴ってあちらこちらに不動化した原材料や仕掛品があふれるようになった。すると、工程内が手狭になって作業性が大幅に低下した。加えて、工程内に物があふれるようになった結果、作業の進捗が見えにくくなり、納期管理にも混乱が生じるようになった。おまけに、調達部門では度重なる納期変更をコントロールできなくなり、頻繁に欠品が発生する事態に陥ってしまった。

 それまでは調達や製造、品質保証といった各部門のキーパーソンが連携し、互いにあうんの呼吸で関連する業務を調整すれば、大抵の突発事態に対応できていた。だが、生産が拡大して業務量も増えると同時に、突発事態の数も増えてくると、キーパーソン同士の連携だけでは工程のバタつきを抑えられなくなった。結果、工程は大混乱して収拾がつかなくなってしまった。

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