崩壊の顛末

 食品を加工して容器に充填し、最後に蓋をかぶせて包装する工程を全て自動機で行う製造ラインを構築している工場がある。これをF工場と呼ぼう。F工場では、同じ機能を持った製造ラインが2つあり、それぞれを1号ライン、2号ラインと呼んでいた。

 F工場では、意匠の関係で複雑な形状をした容器に、これまた複雑な形状の蓋をかぶせているために、蓋のはめあい不良(容器に上手く蓋がはまらない、蓋がズレたり外れたりするなど)が生産ラインで発生していた。全工程を一貫して行うラインの泣き所なのだが、蓋をかぶせる設備で問題が起こると、前工程から後工程まで直結している全工程が止まってしまう。そのため、F工場では応急策として、蓋をかぶせる設備に作業者を1人配置し、問題が発生して生産ラインが止まるとすぐに作業者が対処してライン復旧(生産再開)を行うという対応をとっていた。

 しかし、当然ながらそれでは自動機のメリットを生かせない。そこで、蓋をかぶせる設備でのトラブルを低減すべく、社内にいる設備技術のプロが対策に乗り出した。ところが、そこで設備技術の担当者が見たものは、驚くべき設備の状態であった。

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 1号ラインも2号ラインも共に、設備導入時の図面からは至る所が変えられており、どこをどう変えたのかが全く分からない状態になっていたのだ。例えば、蓋をかぶせる設備の中の搬送系に蓋が引っ掛かったとしよう。現場はまず引っ掛かった蓋(搬送系に詰まった蓋)を取り、そして引っ掛かった搬送部のガイドを少し曲げて引っ掛かりにくいようにする、といった対策を講じる。何度もこうした問題に対応するうちに、設備のあちこちが曲げられたり、広げられたり、樹脂板で新たなガイドが作られたりして、まるでパッチワークのような状態になっていたのだ。しかも作業者だけではなく、上司である主任や係長も同様の場面で同様の対応を行っていたため、「どんな問題が起こり」、それに対して「どのような対応をしたのか」という、問題の全容を把握している人は誰もいなかった

 1号ラインも2号ラインも、それぞれ別の小改造が加えられており、もはや原型を保ってはいなかった。そのため、問題解決を請け負った設備技術の担当者は、どこが問題でどのような不具合が起きたのか、現状のままでは原因を論理的に調査することは不可能だと途方に暮れてしまった。

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