崩壊の顛末

 製造部長の下に複数の課長がおり、その課長の下には数人の職場リーダーと数〜十数人の職場メンバーがいる工場がある。この工場をE工場と呼ぼう。

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 E工場では、毎日の始業時に「朝会」と呼ばれた朝礼を実施し、その日の生産の段取りや注意すべき生産の変化点、あるいは品質問題などに対する対応の伝達事項を伝えていた。毎日の朝会は5〜10分と短いものだったが、製造部長のX氏は朝会を情報伝達の場として、また組織だった動きをするために必須の活動として重視していた。そのため、毎日の朝会は製造部長であるX氏が自ら行っていた。

 ところが、定期的な人事異動によりX氏は別の工場へと担当が変わり、後任の製造部長にはY氏が就任した。新たに製造部長になったY氏は、当初こそX氏の朝会の習慣を継続していた。だが、生産がひっ迫したタイミングで「生産活動優先」を掲げ、必要な指示は各課長から行うようにと課長たちに命じて、工場全体での朝会を廃止してしまった。その結果、1つの課を除いて、課単位での朝会も行われなくなっていった。唯一、朝会を課単位で継続していたのは、前任の製造部長X氏の時代に、X氏が不在時の代行権者として朝会の司会を担っていた筆頭課長だった。

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 朝会を実施しなくなってから、各課では課長が現場への指示をその都度行うようになっていった。内容は課長任せだったので、さまざまなトラブルが発生するようになった。例えば、毎朝当日の予定をメンバーに指示する課長もいれば、朝は忙しいので個々のメンバーに、その日に行うことをその都度指示する課長もいるなど、指示の仕方がばらついた。また、変化点を注意深く説明する課長もいれば、ただ変化点について注意を促す課長や、十分に変化点を伝達できずに現場が混乱し始めてから後追いで変化点の情報を伝える課長もいた。

 結局、現場のメンバーは課長からまともな指示が来なくなったことで、課長の指示を期待することもなくなり、課長の指示を軽視するようになってしまった。また、生産に必要なことは課長に聞くのではなく、情報をうまく伝えてくれる別の人物に聞きに行くようになるなど、職場への指示系統が混乱してしまう結果となった。

 この混乱に比例するように、工程トラブルや納期遅延、あるいは品質トラブルが増えていったことは容易に想像できるだろう。

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