崩壊の顛末

 受注が好調で生産がひっ迫している工場がある。これをC工場と呼ぼう。この工場では高稼働が常態化しており、残業や休日出勤なども規制の上限スレスレの水準になっていた。そのため、現場の従業員にはかなりの負荷がかかっていたのだが、「今が踏ん張り時だ」と管理者がハッパを掛け、従業員の努力と工夫で何とか出荷を維持していた。

 会社側も手をこまぬいていたわけではない。今後も見込まれる増産に対応するために、積極的に求人募集をかけていた。だが、昨今の人材不足の市場環境で思うように採用は進んでいなかった。むしろ、一向に減らない残業で従業員が疲弊しており、一部の職場では離職者も出始めていた。そのため、C工場は文字通りギリギリの状態での操業を余儀なくされていた。

(出所:日経 xTECH)

 そうした中、会社の総務部に1本の電話がかかってきた。「C工場で、品質不正が行われている」という告発だった。社内の事情に詳しい口ぶりから内部告発と思われたが、匿名であり、明確な証拠も示さなかった。電話を受けた総務部門は、いわゆる「いたずら電話」の類いだと受け取った。だが、総務から報告を受けた工場長と、その上司である専務は、事実確認が必要と判断して直ちに社長に報告した。すると、社長は、昨今の社会情勢も鑑みて「告発の真偽を確認せよ」と品質保証部長に内偵の指示を出した。

 品質保証部のベテラン勢が定例の現場監査で告発の真偽を確認すると、正式な手順とは異なる簡単な方法で製品の品質検査を実施していることが判明した。納期に追われる中で、どうしても出荷に間に合わせるための苦肉の策として現場が独断で決めた方法だった。もちろん、顧客との取り決めに反する行為だ。だが、過去の記録を確認したところ、品質的には問題のないデータだった。そこで、作業を正規の手順に戻すという対応で事態を収めようという判断に至った。

 インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上に、「C工場が品質不正を隠ぺいしている」という書き込みがあったのは、それからしばらくしてからだ。その後は真偽が入り混じった書き込みが続く、いわゆる「炎上」の事態となった。ついにはメディアの目にも止まり、顧客からの事実確認要請が相次いだ。現場は混乱し、C工場は出荷停止に陥った。

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