崩壊の顛末

 日々、数多くの種類の製品を生産している工場がある。これをA工場と呼ぼう。品種ごとの生産数量はばらばらで、同一品種を大量に造る注文もあれば、多品種少量の注文もある。受注生産を基本とするため計画生産が難しく、多くの場合、納期に余裕のない状態で受注するというのが実情だ。納期や数量の変更なども多く、現場の運営は決してたやすいものではなかった。

 A工場ではここ数年、生産は増加の一途をたどっていた。ところが、標準納期よりも短い、時間に余裕のない発注も増加していた。そのため、現場は生産に次ぐ生産でばたついており、目利きと評されるベテラン社員が采配を振ることで何とか出荷を維持していた。ベテラン社員は各工程に「次はこの製品だ」「先にこの製品を造ってくれ」といった具合に矢継ぎ早に指示を出していた。

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(作成:日経 xTECH、写真:PIXTA)

 だが、いくらベテランの采配でも限界はあるものだ。特定の工程に無理を押し付けたり、作業者によって負荷に差が出たりして、現場の不満は日増しに高まっていった。采配が失敗することも増え、出荷納期に影響が出てしまったり、想定外の残業対応で急場をしのいだりすることが頻発。皆がイライラを隠せないような状況になっていった。

 そして、現場の緊張が頂点に達した時のことだ。現場の采配を一手に取り仕切っていたベテラン社員が体調を崩し、休職を余儀なくされた。その後を継いだのは、現場の中堅リーダーだった。彼はとにかく出荷を維持するために、次から次へと指示を出し続けた。ところが、その指示は作業者を右往左往させ、現場は大混乱。ついには「混乱の原因はあなただ!」と作業者から猛反発を受け、A工場は現場も指示系統も事実上崩壊。製品の出荷が止まってしまったのだった。

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