優れたスキルや経験を有しているのに、会社から正当に評価されていないと感じるエンジニアがいる。その1人である建設技術者の転職事例を、リクルートキャリア 建設技術者・不動産専門職領域専任シニアコンサルタントである平野竜太郎氏が紹介する。50代で契約社員として働いていたが、管理職として大手ゼネコンへの転職を果たし、前職と比べて200万円の年収アップも成し遂げた。(日経 xTECH編集)

 「会社から正当な評価を受けていない」。転職を決意した人に理由を尋ねると、上位に入るのがこんな声です。経験を積んだミドルからシニア層にも、この転職理由は多く見られます。

 転職相談に来られたNさん(50代前半・男性)から話を聞いたとき、私は憤りを覚えました。「これほど優れた能力や実績を持つ方が、こんな不遇であっていいわけがない。社会にとっても損失である」と。

 Nさんは新卒で大手ゼネコンに入社。設計者として高度な専門知識が求められる施設を手がけ、管理職も務めた後、40歳前後で転職しました。向上心が高かったNさんは、上のポストが詰まっていて大きな裁量権を持てるまでに時間がかかること、仕事の幅を広げられないことをもどかしく感じていました。上司による評価や会社の風土への不満もたまっており、会社を飛び出す決意をしたそうです。

(出所:123RF)

 しかし、ここからキャリアの迷走が始まることになります。

 転職先のコンストラクション・マネジメント会社は、想像していた社風とは異なり、望む働き方ができなかったため早々に退職。大手設計事務所に転職します。ところが、「契約社員からのスタートだが、いずれ正社員に登用」という約束が守られず、別の大手設計事務所に3度目の転職。しかしここでも待遇は「契約社員からスタート」でした。

 それでもNさんは、専門性を生かして素晴らしい活躍を見せました。国家レベルのプロジェクトに関わる施設の設計を主導し、会社が公募プロポーザルで最優秀者に選ばれたこともあります。

 しかし、そんな多大な貢献をしながらも、身分は「契約社員」のまま。年収も上がらず、プロジェクトに名も残されず……。「働きに対して正当に評価されたい」と業を煮やし、4度目の転職を決意したというわけです。

 スキルや実績が素晴らしいだけでなく、Nさんは極めて知的で、客観的視点と冷静さを備えた人物。Nさんに尊敬の念を抱いた私は、仕事の枠を超え、「Nさんが活躍できる場を見つけたい、信頼されるパートナーになりたい」と思うようになりました。

古巣を除く全大手ゼネコンをターゲットに

 Nさんの専門分野は、日本の安全・安心を守る要と言えるもの。その知識と経験はフルに生かされるべきですが、寄せられている求人の中にその専門人材を求める案件はありません。ニーズは確実にあるはずですが、そのタイミングでは募集がなかったのです。