宇宙ビジネスの規模拡大に合わせて、関連業界で人材の流動が活発化している。どんな人が、どんな理由で宇宙関連企業に転職しているのか。部品メーカーから宇宙ベンチャーに転職した50代エンジニアの事例を、リクルートキャリア ハイキャリア・グローバルコンサルテイング部 シニアコンサルタント(New Biz・Space・Robotics担当)の新堂尊康氏が紹介する。(日経 xTECH編集)

 「宇宙ベンチャーですか……そのお話なら以前もお断りしましたよね。私はうまくいくと思っていませんから」

 私がTさん(50代男性)に宇宙ビジネスを手がけるベンチャー企業・X社の求人を紹介したときの反応は、実にクールなものでした。しかしその数カ月後、Tさんは「ぜひここで働きたい」と、X社への入社を決断することになるのです。

 私とTさんの出会いは約2年前。衛星の開発・製造等を行う、別のある宇宙ベンチャーからシステム設計職の求人依頼を受け、候補者を探していたときです。Tさんは大手重工メーカーを40代後半で退職し、部品メーカーに転職して数年がたった頃でした。転職先で思っていたような働き方ができず、再び転職を目指していました。

(出所:123RF)

「大手企業」「年収維持」を条件に転職先を探すも……

 私はTさんが持つシステム設計のキャリアに目を留め、求人を紹介したいと申し出ました。しかし、Tさんは「興味ありません」とピシャリ。「その宇宙ビジネスはうまくいかない。なぜなら~」と、将来性に期待できない理由を実に論理的に話されました。私はそのやり取りから「“宇宙”という夢のあるステージに進むより、もっと安定した基盤を背景に事業運営をしている企業の求人を希望されているのだな」と考え、宇宙ベンチャーの紹介は控えることにしました。

 それでも、これがご縁で、私はTさんの転職活動をサポートするようになりました。彼の希望は「地元に帰りたい」「大手企業」「年収維持」。ところが、条件に合う求人はなかなかなく、複数の大手企業に応募してみるものの、面接まで進めず。紹介できる求人も尽き、そのまま時間が過ぎていきました。

 それから1年ほどたった頃。新進気鋭の宇宙ベンチャー・X社から求人依頼が入りました。業界内ではすでに注目を集める存在となっていたX社。それまで小型衛星を加速させる「推進系技術」に注力していましたが、新たに、宇宙空間における小型衛星の耐久性をシミュレーションする「品質管理」の強化が必須課題となっていました。