既存の建築ストックの活用に向けて、改正建築基準法では用途変更に関する規定が大幅に緩和される。確認申請が不要な規模が広がるとともに、防火改修が不要になる特例も設けられる。設計の自由度が広がりそうだ。

 「改正により、いわゆる4号建築物の用途変更ができないといった問題の解決につながる。簡易宿所や老人福祉施設などへ変更しやすくなる」。こう語るのは建築再構企画の佐久間悠代表だ。数々の既存不適格建築を再生し、建築法規に精通する人物だ。ストック再生に関わる実務者の建築基準法改正への期待は高い。

 改正建基法の大きな柱の1つが既存ストックの活用促進だ。増え続ける空き家の問題に対し、戸建て住宅を他の用途に変更しやすくするための規制緩和が盛り込まれた。

 目玉となるポイントは、戸建て住宅から特殊建築物への変更の際に、建築確認手続きを不要とする対象を拡大したことだ〔図1〕。従前の規制では、変更後の用途の床面積が100m2以下の場合は不要としていたが、200m2以下までに拡大する。

〔図1〕200m2以下の戸建て住宅は約9割
国土交通省が示した戸建て住宅の面積分布。戸建て住宅を他の用途に変更する際に確認申請が不要な規模を、200m2以下まで拡大する(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 加えて、小規模建築物の耐火構造に関する規制も緩和する。3階建てで延べ面積200m2未満の住宅などを特殊建築物に変更する際に、柱や梁といった主要構造部を耐火構造にする改修を不要とする特例を設ける。倉庫、自動車車庫などの用途は従来通り、耐火構造にすることが必要だ。

 特例に当てはまる場合でも、非常用照明の設置など避難上の安全措置は必要だ〔図2〕。改正法では(1)飲食店や学校、遊技場など、(2)ホテルや病院、児童福祉施設など──のパターンに分けて対応を求めている。

〔図2〕用途変更時に耐火構造とする改修を不要に
特定建築物への用途変更の際に義務付けられる設備は、変更後の用途に応じて3パターンある。非常用照明設備はいずれも必要だ。飲食店などに変更する場合は他の措置は不要。ホテルや病院などに変更する場合は警報設備の設置や、階段など移動空間と客室の区画が必要になる(資料:建築再構企画の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 ホテルや病院などの用途に変更する場合には警報装置の設置や階段の区画が必要だ。国土交通省が2018年12月に公表した建築基準法施行令の改正に向けた検討案では、階段の区画の基準を示している。

 ホテルや旅館、共同住宅などでは、階段などの移動空間と居室を、「間仕切り壁または戸」で区画することとし、自力避難困難者の利用が想定される病院や診療所などは、「間仕切り壁または防火設備」とした。病院や診療所などは防火設備などで区画されている場合に限り、2以上の直通階段の設置を不要としている。

 さらに、3階建てで、その用途の床面積が100m2を超える場合は、建物所有者などに維持保全計画などの作成と定期報告を義務付ける。改修後も継続的にチェックを行う方針だ。

 国交省住宅局建築指導課の山口義敬企画専門官は、「現行制度では主要構造部に石こうボードを張るなど大規模な改修が必要だった。そのため、建て替えに近い費用がかかり、非住宅への用途変更が難しかった」と説明する。

 規制緩和の背景には、空き家の急増がある。総務省の住宅・土地統計調査によると空き家の約4割が「その他の住宅(放置された空き家)」〔図3〕。その大部分を戸建て住宅が占める。

〔図3〕空き家の約3割が戸建て住宅
2013年に総務省が実施した調査の結果。賃貸や売却用、別荘を除いた「その他の住宅(放置された空き家)」のうち、戸建て住宅が占める割合は高い。国交省は今回の改正で、戸建て住宅の活用促進を図る(資料:総務省)
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 放置された空き家の除却や利活用を進めるため、空き家対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特措法)や特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度(安心R住宅)、セーフティネット住宅制度といった、法制度が近年整えられてきた。今回の建基法改正では、空き家の非住宅としての利用促進をターゲットとした。

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