米アップル(Apple)の主力事業である「iPhone」の売上高は全体の約6割を占める。そのiPhoneの売上高が2018年10~12月期に前年同期比15%減に陥り、同社全体の売上高も同5%減となった。iPhoneの減速が全体の足を引っ張った格好だが、個人的には「iPhoneの売上高が15%も減ったのに全体で5%しか落ちなかったこと」に注目している。

 2018年10~12月期決算を改めて振り返ると、iPhoneを除いた全ての事業で売上高が前年同期を上回っていた。同社が2018年10月に発表したiPad Proは新しいデザインと高い処理性能、MacBook AirとMac miniは性能や機能の大幅な強化がそれぞれ評価され、いずれも買い替え需要を誘った。

 ウエアラブルおよびホームデバイスでは心電図機能を搭載した「Apple Watch Series 4」やワイヤレスイヤホン「AirPods」の好調が続き、売上高が前年同期比33%増だった。サービス部門も同19%増と順調に伸びている。もはや成長の主軸はiPhoneから他の領域に移っており、だからこそ全体でも同5%減の影響にとどまった。「脱iPhone」シフトで衝撃を和らげた。

 しかし、ここに矛盾も感じている。脱iPhoneとは言え、アップルの成長はiPhoneのユーザー基盤が前提となっている点だ。

 iPadやMacは、ユーザーがiPhoneでの体験やソフト資産などをそのまま生かせるようにしてある。iPhoneが前提のApple WatchやAirPodsは言うまでもない。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)も2019年3月のイベント冒頭で「ハード、ソフト、サービスの三位一体」による開発を強調していた。

アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は、2019年3月のイベントで「ハード、ソフト、サービスの三位一体」による開発を強調していた
(撮影:松村太郎)
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 同イベントには、米国で人気の司会者・女優であるオプラ・ウィンフリー氏が登壇し、新しい映像配信サービス「Apple TV+」について「10億人のポケットに番組を届けることに大きな魅力と可能性を感じる」と語った。10億人というiPhoneのユーザー基盤があるからこそ、Apple TV+向けにオリジナル番組を制作する意味があるのだ。

サービス部門の目標は500億ドル

 アップルは同イベントでApple TV+のほか、300を超える雑誌や新聞が読み放題となる「Apple News+」、100以上のゲームが遊び放題となる「Apple Arcade」、ケーブルテレビチャンネルを1つから視聴できる「Apple TV channels」などのサービスを発表した。

 Apple News+では、iPhoneやiPad、Macなどのデバイスに合わせて最適なレイアウトでコンテンツを閲覧できる。ゲームや映像の配信サービスではステレオ再生の改善を図り、広色域ディスプレーやHDR再生にも対応した。

300を超える雑誌や新聞が読み放題となる「Apple News+」。iPhoneやiPad、Macなどのデバイスに合わせて最適なレイアウトでコンテンツを閲覧できる
(撮影:松村太郎)
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 一方、2019年3月発表のAirPods(第2世代)では音の遅延を30%改善し、ゲームや映像をワイヤレスオーディオで楽しめるようにした。このようにハードとソフトの両面から、サービスの拡充を強く推進する体制を築いている。

 アップルにとってサービス部門は戦略上、非常に重要な位置付けにある。同社はかつて、サービス部門の売上高について、2020年に2016年比で2倍に成長させるとしていた。

 その額はおよそ500億ドル規模。この水準は米国の企業番付「Fortune 500」の60位前後の売上高に相当する。60位前後には米ウォルト・ディズニー(The Walt Disney)、米ファイザー(Pfizer)、米HP、米ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)、米AIG、米シスコシステムズ(Cisco Systems)など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。