米アップル(Apple)は2019年3月に入って雇用創出に関するリポートを公表した。同社が例年公表しているもので、米国だけでなく、サプライヤーが多い日本や欧州、中国向けも用意されている。

米アップルが公表している雇用創出リポート
(出所:米アップル)
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 雇用創出リポートは、米国内の雇用を重視するトランプ政権に向け、同社が大きく貢献していることをアピールする狙いがある。

 米国は現在、中国と貿易戦争を展開し、トランプ大統領は就任前から「iPhoneを米国で作らせることが目標」としてきた。アップルはこうした動きにできるだけ巻き込まれないように協調と貢献を図っていきたいと考えているはずだ。

 この狙いはうまくいっているように見える。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)はトランプ政権の雇用政策諮問委員会にも呼ばれた。

 クックCEOは同委員会で、アップルが大学を中退した創業者によって設立された企業である点を挙げ、大学の単位が全てではないとの考えを示した。さらに米国の同社従業員の半数は4年制の大学を出ておらず、これを誇りに思うとも述べた。

 この背景には、大学で学ぶスキルと同社が本当に必要としているスキルとのミスマッチがあるという。これを埋めるため、プログラミングのスキルを幼稚園から高校を卒業するまでに学ぶことが重要だとした。

 一方、米国以外で雇用創出リポートを公表する狙いは何か。こちらについては、「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)による支配」との見方を打ち消したい考えが透ける。

 実際、GAFAのような巨大プラットフォーマーが世界中の人々のデータを吸い上げ、そこから生み出される利益を米国に集めているとの批判は多い。欧州をはじめ、こうした構造に制度面からメスを入れようとする動きが巻き起こっている。

 その点、アップルはアジアを中心としたサプライチェーンを築き、製品の製造まで手掛ける。オンラインサービスが中心であるGAFAの他の企業とは、明らかに性質が異なる。こうした点を訴求していく狙いとみられる。

アプリで新たな産業を創出

 アップルは今回、日本で創出した雇用を80万人と報告した。同社の直接雇用は4000人。これにはApple Store(現在8拠点)の従業員も含まれ、パートタイム雇用の従業員に対しても福利厚生を適用しているという。従業員数は2010年比で4倍に増えており、iPhoneの成長とともに規模を拡大してきた。

 部品の製造や製品の流通に携わるサプライヤーを通じて日本で創出した雇用は22万人。サプライヤーの数は900社超という。業種別の内訳は製造業が最多の14万4000人、以下、卸売/小売業が2万4000人、科学/技術サービスが1万8000人、情報/コミュニケーションが9000人と続いた。

 同社の紹介ページでは部品の製造で有名な村田製作所やミネベアミツミをはじめ、再生可能エネルギー化に携わる太陽グリーンエナジー、Apple Park(米本社)やApple Japanに数千脚の天然木アームチェアを納入したマルニ木工が登場している。