米アップル(Apple)は2014年にモバイル決済サービス「Apple Pay」を開始し、根気よく展開を広げてきた。最近では、スーパー大手の米ターゲット(Target)、ファストフードの米タコベル(Taco Bell)、ハンバーガーチェーンの米ジャック・イン・ザ・ボックス(Jack in the Box)などがApple Payへの対応を表明。小売りチェーンの全米トップ100のうち、74社に広がった。

 2018年には、ドラッグストア大手の米CVSファーマシー(CVS Pharmacy)がApple Payに対応したことでも話題を呼んだ。というのも、CVSファーマシーはこれまで、独自の決済方式「CVS Pay」を推進してきたからだ。競合他社にも採用させてしまうApple Payの強みと死角はどこにあるのだろうか。

個人間決済でライバルの先を行く

 Apple Payの強みは、個人間決済の「Apple Pay Cash」だ。「iMessage」を通じて手軽に送金できる点を売り物にする。

 Apple Pay Cashでは米グリーンドット(Green Dot)が発行するディスカバーネットワークのデビットカード口座を採用。この口座とひも付いたNFC(近距離無線通信)トークンをiPhoneやApple Watchに読み込むことで実現する。ユーザーがこうした手続きを気にする必要はないが、裏では既存の金融システムを活用している。

 米国では既に「Venmo」「Square Cash」「Facebook Messenger」などで個人間決済が実現されてきた。アカウントと銀行口座をひも付け、手数料無料で送金できる仕組みとなっており、iOS/Androidといったプラットフォームの制約なく使える点が特徴だ。

 これに対してApple Pay CashはiPhone同士の送金に限定される課題は残るものの、受け取った金額をApple Pay Cashとして保持し、Apple Pay対応店舗でそのまま使える。実はこの部分が決定的に異なる。他社も独自デビットカードの発行で利便性向上に努めているが、Apple Pay Cashはそうしたカードを新たに持つことなく運用できる。

Wallet対応に消極的な日本

 アップルは日本でApple Pay Cashをまだ導入できていないが、個人間決済を除いた決済体験という点では恐らく同社が目指す理想型を実現できている。その大きな要因が「Suica」だ。

2016年10月開催のスペシャルイベントでApple PayのSuica対応を紹介する米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)
(撮影:松村 太郎、以下同じ)
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 Apple PayのSuicaはコンビニエンスストアや自動販売機、コインロッカーなどで通常のSuicaと同様に使えるだけでなく、駅の改札も瞬時に通過できる。オートチャージできるクレジットカードは「ビューカード」に限られるが、Webサイトやアプリを使わずにチャージできるのは便利だ。さらに「エクスプレスカード」と呼ぶ設定により、指紋や顔による生体認証を省略してタッチ決済できるようにした。

 Apple Payが日本で優れたパフォーマンスを発揮できているのは、SuicaをはじめとするFeliCa系の非接触決済に対応したからだ。これにより、冒頭で説明したような店舗開拓の苦労も回避できた。