デバイスからサービスへと軸足をシフト

 これまで「YouTube」や「NetFlix」、「Hulu」、「Amazon Prime Video」といった映像配信サービスについては、多くのスマートテレビが対応してきた。しかし、これまでアップルのコンテンツサービスはApple TVを接続しなければテレビで楽しめなかった。このハードルが下がった意義は大きいと言える。

 もちろん、提供対象を他社のデバイスに広げれば独自色は薄れる。アップルのエコシステムに他社が入り込む余地を与えることになるが、デバイスからサービスへと軸足を移していく戦略に沿った取り組みと解釈すべきだろう。一部ハードウエアの売上高を多少犠牲にしてでも、サービスの売上高を最大化していく方針のように見える。

エンターテインメントとテレビについて語る米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)
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 アップルは独自の映像配信サービスの立ち上げに向け、かねてより準備を進めてきた。2018年も著名なテレビプロデューサーや映画スタジオと活発に契約を交わし、直近ではスヌーピーで知られる「PEANUTS」関連の番組や短編映画の制作でカナダのDHX Mediaと提携したことが大きな話題となった。

 2019年は新しい映像配信サービスを発表する良いタイミングではないか。成功させるにはApple TVにとどまらない幅広い視聴環境を整備しておく必要があり、今回の動きはこの布石とも考えられる。

 とはいえ、今回の動きも最新のスマートテレビに限定したものであり、ほとんどのユーザーは依然としてApple TVがなければ楽しめない。Apple TVの価格は1万5800円(税別)からと決して安くなく、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)や米グーグル(Google)が提供しているような低価格なドングル型の登場も望まれる。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) ジャーナリスト・著者。1980年東京生まれ。慶応義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。キャスタリア取締役研究責任者として、教育とテクノロジーによる社会問題の解決に取り組み、プログラミング必修の通信制高校、コードアカデミー高等学校の設立などに携わる。近著は、『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP社)など。