デジタルトランスフォーメーション(DX)のような難しいプロジェクトは、人材を育成する格好の場。ただし、やり方を間違えるとエース級の人材さえ潰してしまう。そんなリスクの回避策とは。

 ITシステムを開発する場合、手順やノウハウを盛り込んだ方法論を使った方が、効率が高まる。ところが、方法論無しにシステムを開発している会社は少なくない。それでも何とかなっているのは、エース級の経験と勘に任せて、何とかかんとかシステムを完成させているわけである。

 このようなエース任せのシステム開発はもう限界だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)を代表とする変革プロジェクトは、これまで経験のない取り組みであることが多く、エース級の経験と勘だけで成功させることは難しい。

 企業がプロジェクトの成功確率を高めるには、エース任せから方法論重視へと転換を図るべきである。方法論という武器がなければ、DXプロジェクトに投入したエース人材でさえも、失敗体験ばかりで潰れてしまうリスクがあるのだ。

武器を持たせず戦場に放り込むな

 方法論とは「いつ、何を、どのようにやればよいか」について、ざっくり書かれている知識集のことだ。ノウハウを言語化したものともいえる。

 筆者らが持つ方法論の例を挙げると「重要な場面ではコンサルタントがプレゼンテーションするのではなく、顧客の責任者が自分の口で堂々と計画を説明し、仲間を巻き込み、協力を依頼すべし」というものがある。誰がプロジェクト計画をプレゼンするかはささいなことに見えるかもしれないが、裏には「顧客のオーナーシップがプロジェクトの成否を決める」という信念が隠れている。単なる精神論でなく、コミュニケーションの質を決める実践的なテクニックなのだ。

 以前、大失敗したプロジェクトのSIerの方々にインタビューした際、あまりに武器を持たされていないので気の毒になってしまった。「要件定義フェーズでどんな資料を作るべきか、誰も知らなかったのか」と聞いたところ、「すべて手探りだった。顧客にせっつかれて試行錯誤し、半年後にようやくシステムで管理すべき情報の一覧表が肝だと分かった」という具合だった。

 これでは時間がいくらあっても足りない。プロジェクトは炎上するし、顧客からの風当たりはきついし、会社は何も助けてくれない――。こんな状況でエースがリーダーに育つわけはない。エースをリーダーに育てるには、役に立つ方法論を確立することも欠かせない要素なのだ。

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