文化庁で文化財行政を担当し、歴史的価値のある建物や街並みの保全に取り組んできた後藤治・工学院大学理事長に、文化財保護法の改正の実効性を聞いた。(インタビューは2018年4月に実施した)

後藤 治(ごとう おさむ)
1960年生まれ。88年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中退、文化庁に入庁。文化財保護部建造物課で文部技官、文化財調査官。99年工学院大学工学部建築都市デザイン学科助教授、05年同教授。17年より現職。歴史的な建物や街並みの保存修復などに長く携わってきた。「伝統を今のかたちに(都市の記憶を失う前に)」(2017年、オフィスビルディング研究所との共編著)など著書・編書多数(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

歴史的な建物を積極的に活用しながら残していく流れを、国がつくろうとしている。今回の文化財保護法の改正をどうみているか?

 歴史的な建物の「保存活用計画」の作成を、法律に位置付けた点は素晴らしい〔図1〕。うまく計画を立てれば、活用の幅は広がる。登録有形文化財も、より公的に支援しやすい状況をつくれるのではないか。重要文化財も、保存活用計画を立てることで活用しやすくなる可能性はある。ただし、これまでのような非常に固い運用をしたら活用は進まないだろう。

〔図1〕文化財保護法改正案の成果と課題
歴史的価値の高い建物を活用しながら残していくための駒はそろいつつある。一方、改修などに必要な資金調達の方策に課題が残る(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

未指定・未登録のものを含め、貴重な近現代建築に対しては、保存活用計画はどのような意味を持つか?

 伝統建築と違って、近現代建築は個々に保存や活用の仕方が違ってくる。どこを残し、どこは変えていいのか。どのように使うのか。その辺りをうまく保存活用計画にまとめることには意味がある。美術工芸品と違って、建物は活用しなければ残せない。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら