歴史的価値の高い建物を活用しつつ保存する事例が、各地で増えている。そうした動きを公的に後押しする内容を盛り込んだ改正文化財保護法が、18年6月に成立。19年4月に施行される。そのポイントを解説する。

 「これからは活用の時代だということを法的に示す大きな一歩だ。新しい仕事が生まれる可能性もある」。そう口にするのは、都市計画が専門の神戸芸術工科大学大学院の西村幸夫教授だ。

 2018年6月に改正文化財保護法が成立した。その内容は、従来の「保護行政」から「活用しながら保存」へと大きくかじを切るものだ。

 法案の作成に向けて、文化庁は17年5月、文化審議会文化財分科会に企画調査会を設置。翌6月から11月までの半年間で14回という異例のハイペースで企画調査会を開催した。西村教授(18年3月まで東京大学大学院教授)は、企画調査会の委員を務めた。議論の結果は、「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について(第一次答申)」として17年12月にとりまとめられた。

 政府は16年にまとめた観光戦略で、20年までに文化財を中核とする観光拠点を全国200カ所程度整備する目標を掲げた。17年12月、内閣官房と文化庁は「文化経済戦略」を策定。20年東京五輪・パラリンピックを機に、その先も見据えた地域づくりや観光産業の拡充などを、日本の文化を活用しながら推進する方針を打ち出した。「文化財の保存・活用は一体として考えるべきだ」とし、推進すべき「6つの重点戦略」に、文化財保護制度見直しなどの具体策を挙げている〔図1〕。

〔図1〕政府の「文化経済戦略」に盛り込まれた6つの重点戦略
  1. 文化芸術資源(文化財)の保存
    • 着実に維持・継承するための体制づくりや文化財保護制度の見直し
    • 文化財の計画的な修復、適切な状態での保存
    • 未指定の文化財も対象とした取り組みの充実、文化財継承の担い手確保、維持・継承支援などの推進
  2. 文化芸術資源(文化財)の活用
    • 積極的な公開・活用を推進するための文化財保護制度の見直し
    • 文化財の観光・まちづくりなどへの積極的な活用
    • 文化財の活用に関する助言・支援などを一元的に行う機能の整備
  3. 文化創造活動の推進
  4. 国際プレゼンスの向上
  5. 新たな需要・付加価値の創出
  6. 文化経済戦略の推進基盤の強化
    • 首長部局が文化財保護を担当できる仕組みの導入
    • 地方財政措置を講じることによる文化財の積極的な保存

2017年12月に策定された「文化経済戦略」は6つの重点戦略を掲げる。文化財の積極的な活用を進めるための具体策として、文化財保護制度の見直しなどを挙げている(資料:内閣官房・文化庁「文化経済戦略」を基に日経アーキテクチュアが作成)

 最近、地域の貴重な建物を生かすまちづくりなどに、設計者が参画するケースは増えている。文化経済戦略や、文化財保護法の改正案は、未指定・未登録も含め、歴史的価値の高い文化財を活用するそうした活動も公的な取り組みに位置付け、後押ししていくことを打ち出している。

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