金融アナリストから、伝統建築や文化財修繕を手掛ける会社の社長に転身。早くから文化財の「活用」を訴えてきたデービッド・アトキンソン氏に、歴史的な建物を残していくための活用の在り方について聞いた。(インタビューは2018年4月に実施した)

デービッド・アトキンソン
1965年英国生まれ。87年オックスフォード大学日本学科卒業。米アンダーセン・コンサルティング入社。90年に来日し、ソロモン・ブラザーズ証券入社。92年、ゴールドマン・サックス証券入社。2007年まで金融アナリストとして活動。09年小西美術工芸社入社。10年より同社代表取締役。文化財や観光振興に関する多数の委員会などに参画している。著書に「国宝消滅」(16年、東洋経済新報社)、「世界一訪れたい日本のつくりかた」(17年、同)など(写真:日経アーキテクチュア)
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文化財行政が、これまでの「保護」重視から、「保存・活用」に転換しようとしている。未指定・未登録のものも含め、歴史的価値の高い建物とどう付き合っていけばよいか?

 保存と活用は、車の両輪だと意識する必要がある。双方のバランスを図りながら守っていかなければならない。

国の重要文化財指定を受けた建物で、保存と活用のバランスが取れた好例を挙げると?

 残念ながらまだない。良い方向に向かっている例としては、国宝の「赤坂迎賓館(迎賓館赤坂離宮)」(1909年竣工、設計:片山東熊)がある〔写真1〕。重要なのは、単に一般公開するようになっただけでなく、かつてあった家具などを置き、実際の使われ方を体感できる形で見せている点だ。 参観料も、個人の大人で、本館・主庭が1000円、さらに和風別館も参観する場合は1500円と、高めに設定している。

〔写真1〕通年公開始まり新たな観光名所に
迎賓館赤坂離宮は、1909年に東宮御所として建設されたネオ・バロック様式の宮殿建築。2009年に明治以降の近代建築で初めて国宝に指定された。16年4月から通年で一般公開が始まった。写真の「朝日の間」は修復のため、19年3月まで閉室する(写真:共同通信社)
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「赤坂迎賓館」は稼いで改修

従来の感覚からすると、割高な印象を受ける。

 私は、迎賓館(迎賓館赤坂離宮、京都迎賓館)のアドバイザーを務めており、一般公開では参観料を4ケタにするよう内閣府に進言した記憶がある。

 従来の文化財のように、空っぽの箱を見せるだけでは4ケタは取れない。それに値する見せ方が不可欠で、実際に使われていた様子を見せているのはそのためだ。

参観料を高めにした狙いは?

 赤坂迎賓館では今、長年の懸案だった「朝日の間」の改修をしている。朝日の間は、天井の絵画などの劣化が進み、改修を必要としていたが、予算が付かなかった。参観料は高めでも、見せ方を工夫したことで多くの人たちが訪れている。年間に何億円もの収入を挙げるようになり、予算が付いた。

上手に活用して稼げば、保存のための予算確保につながるか?

 上手に活用して、人々の関心を集め、楽しんでもらえば、保存のための予算も増やせる。最近、そのことが分かってきて、文化庁も活用をうたうようになっている。

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