米国連邦航空局(FAA)による認定プロセスが終盤を迎え、デリバリー(顧客への引き渡し)までのカウントダウンが始まった「HondaJet」。エンジンの主翼上面配置をはじめとした数々の独自技術を駆使し、室内空間の広さや最高速度、燃費などのスペックで競合機を凌駕する。この革新的な小型ビジネスジェット機の開発プロジェクトを率いたのが、ホンダエアクラフト カンパニー社長兼CEOの藤野道格氏だ。航空機の開発という、日本メーカーにとって未知の領域への挑戦には、技術者1人ひとりの力を信じて優れた要素技術を生み出した「個の強さ」が不可欠だった。(聞き手は本誌副編集長 中山 力)

写真:常盤武彦

 2014年9月から、HondaJetの量産1号機を使った顧客向けデモツアー(デモンストレーション・フライト)を開始しました*1。この2カ月間で300人は乗られたでしょうか。

*1 デモツアーは、HondaJetの量産工場がある米国ノースカロライナ州グリーンズボロだけでなく、ユタ州ソルトレークシティーやアイオワ州デモインといった全米各地、カルガリー、エドモントン、トロントといったカナダ国内、メキシコなどでも実施した。

 これまで、カタログの数値や映像などで室内の広さや性能をアピールしてきましたが、実際にHondaJetの飛行を体験することで得られる情報に勝るものはありません。「すごく静かだ」「ここまでだとは思わなかった」などと言ってもらえて、HondaJetを開発した人間として、すごくうれしかったですね。やはり、お客様がどのように反応するかが最も気になるところでしたから。お客様の多くは自分でも操縦されるので、パイロットシートに座って操縦桿を握ってみるのですが、「ハンドリング性能に優れたスポーツカーみたいだ」という感想を話す方もいらっしゃいました。

 HondaJetは「空のシビック」と表現されることがありますが、これはホンダがかつて米国の自動車業界で起こした革新を今度は航空機業界でも起こす、という意味です。大きいエンジンを大きいボディーに搭載し、燃費も悪くて乗り心地もふわふわ、という当時の米国車が主流の市場に対して、コンパクトで低燃費なシビックをホンダが提案したように、HondaJetで新しい価値観をもたらそう、としたわけです。ただし、性能で比べてみても、他のビジネスジェット機がいわゆる大衆車だとしたら、HondaJetは高性能な高級スポーツカー。それぐらいの違いがあると自負しています。

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