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設計目標
ファーストクラスの広さと価格

 「『HondaJet』は、客室(キャビン)内の広さ、燃費の良さ、飛行可能な速度の全てで既存の小型ビジネスジェット機に勝っている」。米Honda Aircraft社の社長兼CEOの藤野道格氏は、HondaJetの競争力の高さについて自信を見せる。

 例えば、キャビンの広さ。従来の小型ビジネスジェット機では、向かい合って座った乗客の足元のスペースが非常に狭く窮屈に感じる。これに対しHondaJetでは、乗客同士の足がぶつかることなくゆったりと座れる(図1)。燃費については、従来の同級機クラスのビジネスジェット機よりも約20%向上させた*1

図1●HondaJetのレイアウト例
胴体にエンジンを取り付ける必要がなくなったため、胴体を貫く構造部材などが不要になり、客室(キャビン)や荷室のスペースが広がった。上の図は、乗員2人、乗客5人の場合のレイアウト例。向かい合う座席の足元のスペースも広い。
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*1 機体の価格は450万米ドルである。

 こうしたHondaJetは、新しい交通システムというコンセプトの下に開発された。特に、広大な米国では小都市間の移動にエアラインを使うが、必ずといっていいほどハブ空港を経由するために乗り継ぎなど時間のロスが多く発生する。従って、エアラインによる出張は2日仕事が当たり前。ところがもし小都市から小都市へと直接飛べたら、2日仕事が1日仕事に短縮される。藤野氏は、こうした交通システムを実現すれば、多くの利用客が望めると考えたのである。

 とはいえ、乗り心地が悪く利用料金が高ければ客は離れ、せっかくの交通システムも絵に描いた餅に終わってしまう。そこでHondaJetの開発では、キャビンの広さも利用料金に直結する燃費も、「米国における国内線のファーストクラス」(同氏)を基準とした。

 現状のビジネスジェット機1機の利用料金は、小型機でも1時間当たり2000米ドルに近い。これを1000米ドルや1500米ドルまで安くできれば、例えば4人で利用した場合には1人当たりの料金が250米ドルや375米ドルと、米国内のファーストクラス並みになる。併せて、ファーストクラス並みの乗り心地を確保できれば、これまで高嶺の花だった小型ビジネスジェット機の利用客が大幅に増えると読んだのである。

 しかし、キャビンを広くして乗り心地を高めることと燃費を良くすることは、相反する設計要件になる。このトレードオフの問題をいかに解決したか。以下、「スペース」「抵抗」「軽量化」の3つの角度からみていく(HondaJetのエンジンについては、別掲記事を参照)。

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