2016年にトヨタ自動車の完全子会社となったダイハツ工業。軽自動車で培った良品廉価の技術を強みに、トヨタグループで新興国向けの小型車開発を一手に引き受ける。既にインドネシアやマレーシアでは高いシェアを誇るが、今後はタイなどにも対象地域を広げる。一方、成長が著しいインド市場では、トヨタと提携関係にあるスズキとの競合が予想される。ダイハツの新興国戦略について、同社取締役の松林淳氏に聞いた。

ダイハツ取締役の松林淳氏
(写真:行友重治)
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トヨタとダイハツが2017年に設立した「新興国小型車カンパニー」では、どのような取り組みを進めているか。

 ダイハツが主体となって(モジュラーデザインである)「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」の企画・構想、開発などを進めている。トヨタからはBセグメントの下位(Low)以下は任せると言われている。トヨタの「ホーム&アウェイ」の考え方で言えば、その領域はダイハツのホームだからだ。軽自動車および新興国向けのAおよびBセグメントは当社が担当する。

「TNGA(Toyota New Global Architecture)」のBセグメントとの違いは何か。

 DNGAとTNGAは「軸」が違う(図1)。TNGAは基本的に北米や欧州といった先進国向けだ。ここでは衝突安全性などに関する厳しい基準が求められる。こんな言い方をしたら失礼かもしれないが、それを基に新興国向けの安価なクルマを造ろうとしても、恐らく課題が大きいだろう。一方、DNGAは軽自動車の技術を限界まで引き伸ばす考え方だ。「小」から「大」を生み出すアプローチであり、TNGAとは正反対である。トヨタはそれを知っているので、当社に任せると言っている。

図1 DNGAの位置づけ
TNGAは先進国向け、DNGAは新興国向けの技術である。トヨタブランドでも新興国向けならDNGAを使う。(ダイハツの資料を基に編集部が作成)
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 トヨタブランドのA、Bセグメントも新興国向けはダイハツが生産する。逆にトヨタブランドの先進国向けBセグメントはダイハツは手掛けない。そこを手掛けてしまうと、ダイハツ全体のコストが上がって良さが失われるからだ。

 DNGAは、2020年の国内向け軽自動車から導入する。その後、インドネシアとマレーシア向けの小型車に広げる。それ以外の国にトヨタブランドで輸出する展開もあるだろう。実際、当社が生産し、トヨタブランドで提供した「アバンザ」や「ラッシュ」といった車両は、タイなどで販売実績がある。逆にそうした実績があるので、「任せる」と言ってもらえている。ダイハツが生産した車両は、既に90数カ国で販売した実績がある。

タイやインドにも対象地域を広げるのか。

 当社は2025年までに生産台数を250万台に拡大する戦略を掲げている。この目標はインドネシアとマレーシアだけで達成できないことは明らかだ。ただ、当社の軸足はあくまでインドネシアとマレーシアである。両国の軸足を盤石なものとしてから、次の展開を考えていく。

 タイはトヨタの重要な生産拠点であり、我々も協力できる体制にしないといけないだろう。一方、インドはトヨタとスズキのアライアンス〔包括提携による車両の相互OEM(相手先ブランドによる生産)供給など〕があるため、私では答えられない。ただ、基本的には競争力のあるところに任せることになるだろう。これは私見だが、インドはスズキにとっての「ホーム」である。当社のホームはインドネシアとマレーシアであり、ここでは絶対にスズキには負けられない。

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