(写真:日経コンストラクション)
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 福島県の南東に位置する小名浜港。国土交通省東北地方整備局は港の一角に新たな物流ターミナルとなる人工島の整備を進めている。

 現場に乗り込んだ若築建設の鈴木利尚は、人工島の外縁にある既設ケーソンの高さが設計値と大きく異なっていることに気づいた。すぐに工事に取り掛かれない状況だ。

 しかし、鈴木は動じなかった。「社内には各分野のプロフェッショナルが多くいる。組織力で勝負すれば、解決できない問題はない」と豪語する鈴木は、わずか3カ月強で対策を考案して設計変更の協議を完了した。

 鈴木の強みは、社内に強力なネットワークを持っていることだ。過去に技術提案の作成や工事費を積算する部署に在籍したことがあり、当時の人間関係を維持している。工法や設計の検討なら技術部門、費用の話は積算部門と、自身の人脈をフル活用して課題解決に当たる。

 当初の工事内容は、ケーソン護岸の裏込めだ。合計5万2000m3もの砕石をケーソンの背面に投入する。工事は2017年11月に始まり、18年3月までに竣工させる予定だった。

 しかし、受注後に実施した測量の結果、東日本大震災が起こる以前から敷設が進められてきたケーソンが、地震動や波の影響などで、最大で1.5m沈んでいることが分かった。ケーソン天端の設計高さは海面から4mだ。特に南岸側では16函のうちの半数が沈下し、120mにわたって隣り合うケーソン躯体同士に段差が生じていた。

 そのため、ケーソン上を走る計画だったクローラークレーンが作業場に進入できない。裏込め材の投入ができないので、鈴木は着任してすぐに発注者と対策の協議を始めた。

 ケーソンの沈下が引き起こす問題は他に2つある。1つは小名浜港を襲う強烈な波の影響が大きくなることだ。小名浜港に台風などが近づくと、4mを超える波が押し寄せることがある。沈んだケーソンは、言わば護岸の穴だ。そこから波が入り込み、積み上げた裏込め材を流してしまう。

 もう1つは工期の問題だ。ケーソンの高さに不陸がある場合、通常は天端をコンクリートで増し厚して高さをならせばよい。しかし、1mを超える高さのコンクリートの打設に要する期間は、約15m四方のケーソン1つにつき2週間。沈下した範囲全てをかさ上げするには4カ月かかる。物流ターミナルの整備を目標通りの20年度に完了するためには、工期の短縮が不可欠だった。

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