触覚ディスプレーは、アクチュエーターなどの機能要素を用いてヒトに触感覚を引き起こすデバイスである。原理や用途は多岐にわたるが、求められるリアリティーを生み出しつつ現実的な触覚ディスプレーを開発するためには、ヒトの触知覚および感覚全域のメカニズムに対する理解が重要だ。今回はこの触覚ディスプレーについて俯瞰する。

 触覚ディスプレーは広く捉えると、(1)警告/注意、(2)環境再現型、(3)遭遇型の3種類に大別できる。(1)警告/注意の分かりやすい例は携帯電話機のバイブレーターである。アラートをする。この警告/注意のためのデバイスに、触覚のリアリティーは不要であろう。

 一般に触覚ディスプレーというと、触覚のリアリティーを必要とする、(2)環境再現型と(3)遭遇型を指すことが多い。環境再現型は、触る対象の触覚を再現するものである。例えば、複数のアクチュエーターを用いて対象物の形状を再現し提示する。一方、遭遇型は、触った時の皮膚変形を再現するものである。例えば、指に装着するウエアラブルデバイスによって、指先の皮膚を変形させる。能動的な触覚の提示といえる。

 環境再現型は受動的であるため、触り方は自由である。触る側の行動を監視する必要はない。ただし、環境を再現するためにはリアルさが重要である。このため、アクチュエーターを高密度にしなければならない。また、使用面積の制限もある。一方、遭遇型は、ヒトと一体であるために使用面積の制限はないが、カメラなど何らかの方法で触る側の行動を監視する必要がある。さらに、特定の場所でどんな刺激を提示するかという、自由度の問題がある。我々の触覚には振動もあれば温度もあり、そのすべてを再現するのは非常に難しい。

 リアリティーを必要とする狭義の意味での触覚ディスプレーは、最初、環境再現型から始まった。ただし、環境再現型はアクチュエーター密度の問題があったことから、遭遇型にも注目が集まり、現在は2つの技術がそれぞれ進化を続けている。

 触覚ディスプレーの使用用途はさまざまである。警告/注意、遠隔操作やコミュニケーションのための触感提示、感覚値とデジタルを融合させるインターフェース、触覚によるナビゲーション、情動誘発、体機能を誘導してのトレーニング、リハビリテーションなどである。

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