企業が2019年に成長するための「最強のデジタル戦略」とは。このテーマについて、日本を代表するCIOやCDO、有識者など40人が議論した。日経 xTECHが2018年11月21日に開催した「ITイノベーターズサミット」で出た発言のポイントを紹介しよう。

 2018年は多くの企業で、デジタル戦略を推進する専門組織がつくられた。ITイノベーターズサミットの参加者159人に「あなたの会社には、デジタル化を推進する専門組織はありますか?」と尋ねたところ、47.8%と約半数が「ある」と答えた。「いいえ」(52.2%)のほうがやや多かったとはいえ、デジタル部門を設置する企業はもはや珍しくない。

 デジタル部門の運営で問題になりがちなのは、既存のIT部門や事業部門との関係性だ。会合のディスカッションで明らかになった、各社の課題と工夫を見ていこう。

デジタル部門は「スープの冷めない距離」に

――デンソー 技術開発センター デジタルイノベーション室長 成迫 剛志 氏

 自動車部品大手のデンソーは、デジタル化に向けて大きくかじを切っている。自動車業界で急速に進む「コネクテッド(C)」「自動運転(A)」「シェアリング(S)」「電動化(E)」という、4つの変化(CASE)に適応していくためだ。

 施策として、デンソーは2017年4月に「デジタルイノベーション室」を設けた。そのトップである室長に就任したのは成迫剛志氏。日本IBMや伊藤忠商事のシステム部門に務めた後、香港のIT会社の社長に就任。さらにSAPジャパンやデータセンター事業者のビットアイル・エクイニクスなどで要職を務めた経歴を持つ人物だ。

 さらに2018年1月には、米グーグル(Google)などに在籍した経歴を持つ著名なソフトウエアエンジニアの及川卓也氏を、技術顧問として招いた。こうした体制で、CASEに向けたサービス開発を急ピッチで進めている。

 デジタルイノベーション室を率いる成迫室長は、既存の事業部門との関係性を重視し、「スープの冷めない距離を保つようにしている」と話す。スープの冷めない距離とは、親世帯と子世帯が遠くもなく近過ぎもしない適切な距離を保ちながら、同じ地域内で別々に暮らすこと。作ったスープを持って行っても、冷める前に届けられるくらいの近さを指す言葉だ。それをデンソーは、デジタル部門と各組織との距離の置き方に応用した。

デンソーの成迫剛志技術開発センター デジタルイノベーション室長
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 デンソーはデジタルイノベーション室を、神奈川県の新横浜に置いた。愛知県刈谷市にある本社内でも、都内にある東京支社の一部でもない。「本社勤務の従業員が新幹線で東京に出張するとき、手前の新横浜駅で途中下車し、1時間ほどで気軽に立ち寄っていける立地を選んだ」と成迫室長は説明する。

 デジタル部門が既存の事業部門と近くなり過ぎると、従来とは異なる発想でサービスを開発しにくい。どうしても既成概念に引っ張られてしまうからだ。だからといって好き勝手に振る舞えば、社内では浮いた存在になる。逆にデジタル化を進めにくい。そこで付かず離れず、適切な距離を置くことにした。それがデンソーの場合は、新幹線が停車する新横浜だったわけだ。

社内のナンバーワンに声をかける

――フジテック 常務執行役員 情報システム部長 友岡 賢二 氏

 デジタル部門が「PoC(Proof of Concept、概念実証)」を進めるものの、そこで終わってしまい、実際のビジネスにはつながらない。こんな悩みが多くの企業から聞かれた。どうすれば、新しいサービスや考え方を形にして、全社展開できるのか。フジテックの友岡賢二常務執行役員情報システム部長がユニークな工夫を披露した。

 友岡常務は「社内の1人目のターゲットを誰にするか、その1人をどう選ぶかが成功の鍵」と語る。どういうことか。例えば、身近な従業員に、あるテーマについて「社内の第一人者は誰か?」と聞く。そうして名前が挙がった従業員に会いに行き、そこでまた同じ質問をする。順に社内をたどっていくと「これ以上、詳しい人はいない」という1人に行き着くという。その段階でようやく「あなたは何を考えているのか?」「どんなサービスを求めているのか?」を探っていく。手間はかかるが、社内ナンバーワンの逸材に最初に意見や関心事を尋ねるのだ。

フジテックの友岡賢二常務執行役員情報システム部長
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 こうして、社内の第一人者が求めるサービスに照準を合わせて、開発をスタートする。「社内の第一人者にはフォロワーになっている同僚がたくさんいる。だから新サービスをスムーズに広げやすい」と友岡常務は明かす。より多くの従業員に賛同してもらうには、各分野のエースを最初に味方に付けて、その「たった1人」が心の底から満足するようなサービスを作ることを目標に掲げる。彼(彼女)が求めるものには、同僚たちも付いてきてくれるものだ。

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